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SIerからWeb系への転職で年収は上がるのか|有価証券報告書で検証する商流別データと、書類選考を通す実務経験の翻訳法【2026年8月版】

SIerからWeb系への転職と年収の実態を検証する記事のアイキャッチ画像。左に重厚な旧来型オフィスビル、右にネットワーク状の光を放つWeb系企業のイメージが描かれ、中央を青緑のグラデーションの橋がつないでいる

「SIerからWeb系」という検索の裏側にいるのは、業界研究をしている段階の人ではない。すでに転職を意識していて、最後の一押しになる材料を探している段階の人だ。SNS上でも「SESから自社開発に移りたい」という相談や、未経験からWeb系自社開発企業のエンジニアになった事例への反応が一定数観測されている。

ただし、その前提となっている「SIerからWeb系に転職すれば年収が上がる」という理解は、データで見ると必ずしも正しくない。SIerの最上位層の年収は、多くのWeb系企業の平均を上回っている。問題は「SIerかWeb系か」というラベルではなく、今どの商流にいて、そこからどう抜け出すかにある。

この記事では、有価証券報告書ベースの年収データで「年収は本当に上がるのか」を検証したうえで、「SIer歓迎」の求人でも書類選考に落ちる理由と、転職前にやるべき実務経験の棚卸し手順を、実際の転職記録も交えて整理する。

この記事の結論
  • SIer最上位層(野村総合研究所・SRAホールディングス・電通総研など)の平均年収は約1,000万〜1,320万円で、多くのWeb系企業の平均を上回る。年収は「SIerかWeb系か」ではなく、元請けかどうかという商流で決まる部分が大きい
  • SES(客先常駐)の平均年収は約350万〜460万円。同じ「SIer/SES」という括りの中に、SIer・Web系という業界間の差より大きな年収差が存在する
  • 「SIer歓迎」の求人でも書類選考に落ちるのは、実務経験を伝える言葉がWeb系の評価軸に翻訳されていないことが主因。ポートフォリオの有無で通過率が変わったという転職記録もある
  • 転職前にやるべきは、担当工程の言語化・技術スタックのギャップ特定・動くコードの提示という3ステップの実務経験の棚卸し
  • SES・客先常駐からの転職では、現場が変わり続ける中で実務経験をどう証明するかが追加の論点になる

SECTION 01SIerからWeb系で「年収は上がる」と言い切れるのか

まず、転職の動機として最も語られやすい「年収」を数字で確認する。SIer各社の平均年収は有価証券報告書に開示されており、EDINET経由で誰でも確認できる。上位層を見ると、次のような水準になっている。

区分年収の目安出典
SIer最上位層野村総合研究所・SRAホールディングス・電通総研・三菱総合研究所・伊藤忠テクノソリューションズ(上位5社平均)約1,177万円各社有価証券報告書(EDINET)
システムエンジニア全体の平均約514万〜574万円求人ボックス 給料ナビ/厚生労働省調べ
SES(客先常駐)平均20代 約339万円・30代 約408万円約350万〜460万円テックゴー調べ

※ SIer最上位層はコンサルティング・シンクタンク色の強い企業が中心で、SIer業界全体の平均ではない。売上高ランキング上位企業とは必ずしも一致しない点に注意。

この3行を並べるだけで、ひとつのことがわかる。「SIer」という括りの中に、SIerとWeb系という業界間の年収差より大きな幅がすでに存在しているということだ。最上位のSIerと一般的なSESの間には700万円以上の開きがあり、これは「Web系に転職すれば埋まる」種類の差ではない。

FRAMEWORK
年収を左右しているのは業界ラベルではなく、元請け(上流)にいるか、下請け・客先常駐(下流)にいるかという商流上の位置だ。この構造は同じくシステムインテグレーション業界を扱ったインフラエンジニアの年収を商流別・工程別に検証した記事でも同様の傾向が確認できる。Web系への転職で年収が上がるとしたら、それは「Web系だから」ではなく、転職を機に商流の位置が変わる、あるいは裁量労働・成果連動の評価に切り替わるためであることが多い。Web系企業の年代別の年収データそのものはWebエンジニアの年収を年代・言語・雇用形態別に検証した記事で詳しく扱っている。

したがって、転職活動を始める前に自分に問うべきなのは「SIerからWeb系に行けば年収は上がるか」ではなく、「今の自分は、今の会社の中で、どのくらい商流の下流に位置しているか」だ。元請けに近い立場で上流工程を担当しているなら、Web系への転職はキャリアの選択肢を広げる意味はあっても、年収面では横ばい、あるいは一時的に下がるケースも十分にありうる。逆に、多重下請け構造の深い場所にいるなら、Web系に限らず「商流を上げる」転職そのものが年収改善に直結しやすい。

SECTION 02「SIerはやめとけ」は本当か|残業データで見る、辞めるべきケースと辞めなくていいケース

「SIerはやめとけ」という言説は検索結果にも一定数存在するが、その根拠として語られる「残業が多い」という主張は、データで見ると一様ではない。

区分残業時間の目安出典
全産業平均月 約9.8時間厚生労働省「毎月勤労統計調査」2025年分
情報通信業平均月 約15.8時間同上
ITエンジニア平均年間221時間換算月 約18.4時間JISA「情報サービス産業基本統計調査」2024年版
SES企業平均月 約9時間JISA調査(2022年版)

※ 業界内のばらつきが大きく、受託開発SIerとSaaS系企業では月10〜15時間の差が開くこともある。一部のITコンサル系企業では月50時間を超える水準も観測されている。

意外に思われるかもしれないが、SES企業単体の平均残業時間はむしろ低めに出ている。「SIerはやめとけ」の実態は、残業時間そのものよりも、配属先を自分で選べない・仕事の裁量が小さい・特定案件の技術に経験が偏るといった、時間では測れない要素にあることが多い。残業が少なくても、案件と関わらないヘルプデスク業務や単純作業に長期間張り付いている場合、次の転職で語れる実務経験が積み上がらないという問題の方が深刻だ。

まず社内で検討する余地がある
  • 今の会社・部署の中でまだ上流工程に挑戦していない
  • 残業や待遇への不満が中心で、業務内容そのものは嫌いではない
  • 異動願いや社内公募など、動いていない選択肢が残っている
  • 直近1〜2年で明確なスキルの伸びが見込めるプロジェクトにいる
転職が有効な選択肢になりやすい
  • 1年以上、保守・運用や単純作業から抜け出せていない
  • 配属先の選定権が自分になく、案件が変わるたびに技術が分散する
  • 要件定義〜リリースまでの一連の工程に関与した経験がほぼない
  • 会社の商流上の立ち位置(多重下請けの深さ)を変える手段が社内にない

SECTION 03「SIer歓迎」なのになぜ書類で落ちるのか|実務経験の翻訳問題

SIer・SES出身者の転職活動でよく報告されるのが、「求人票には『SIer歓迎』と書いてあったのに、応募したらほとんど通らなかった」という現象だ。実際にSIerからWeb系企業に転職した人の記録を見ると、次のような数字が公開されている。

CASE RECORD
あるSIer出身エンジニアの転職活動記録では、書類応募15社に対し通過7社(通過率47%)、一次面接通過4社、最終面接2社、内定1社という結果が報告されている。当初はポートフォリオなしで応募した最初の5社が全滅したが、「React + TypeScript + Next.js」で作成したタスク管理アプリをポートフォリオとして添付し始めてから通過率が上がったという。転職活動期間はエージェント登録から内定まで約4ヶ月。(出典:note「SIerからWeb系に転職した俺が全部話す」)

この記録が示すのは、SIerでの実務経験が「価値がない」わけではなく、そのままの言葉では伝わらないということだ。SIerの職務経歴書によくある表現は、進捗管理・仕様調整・テスト工程といった、工程名を並べた記述になりやすい。一方でWeb系企業の採用担当者が評価するのは、その工程で「何を動かし、何を改善したか」という成果ベースの言葉だ。同じ経験でも、書き方次第で評価が変わる。

SIer側の経験(要件定義書の読解・進捗管理調整・品質保証プロセス)を、Web系で評価される言葉(ステークホルダー調整力・プロジェクト推進力・リリース前品質担保の経験)に対応づける翻訳フロー図
SIerでの担当工程を、Web系の採用担当者が評価する言葉に翻訳する。工程名の羅列ではなく、担った役割と成果として言い換える。

実際に職務経歴書を書き換える際のイメージは、次のようになる。

NG
「要件定義書に基づき、進捗管理を実施した。」 工程名の説明にとどまり、規模・関わった人数・成果が見えない。採用担当者は再現性を判断できない。
OK
「要件定義から本番リリースまで、3チーム・社内外10名のステークホルダーとの合意形成を週次で担当。仕様変更による手戻りを前工程比で削減した。」 関わった規模(人数・チーム数)と、担当した結果(手戻りの削減)が具体的に書かれている。
NG
「総合テスト工程を担当。」 「テストをやった」という事実の報告で終わっており、Web系企業が重視する品質への関与度が伝わらない。
OK
「リリース前の品質担保プロセスを設計し、障害検知から本番反映までのリードタイム短縮に関わった。」 「担当した」を「設計・改善に関わった」に言い換え、プロセス改善への当事者意識を示している。

SECTION 04転職前にやるべき実務経験の棚卸し(3ステップ)

職務経歴書の言葉を翻訳する前に、翻訳する材料そのものを揃える必要がある。手順は次の3つだ。

STEP 1 担当工程と成果を言語化する これまで関わったプロジェクトを時系列で並べ、それぞれ「担当した工程(要件定義/設計/実装/テスト/運用のどこか)」「関わった人数・チーム規模」「数字で示せる成果(リードタイム・不具合件数・工数など)」の3項目で書き出す。数字が残っていない場合は、当時のスプリント計画や障害チケットの件数など、代替できる記録がないか確認する。
STEP 2 技術スタックのギャップを特定する 志望するWeb系企業の求人票に並ぶ技術要件(本番運用経験、CI/CDの構築・運用、コードレビュー文化への適応など)と、自分が実務で触れてきた範囲を照らし合わせる。SIerの現場では「設計はするがコードは書かない」「本番環境に直接触れない」といった分業が起きやすく、ここが自社開発企業との最大のギャップになりやすい。
STEP 3 動くコードで補う STEP2で見えたギャップは、個人開発のポートフォリオやOSSへの貢献、技術記事のアウトプットで埋める。前述の転職記録でも、ポートフォリオの追加が書類通過率の転機になったと報告されている。完成度よりも、設計判断の理由を説明できることの方が評価されやすい。
棚卸しの結果を、社外の目線で確認する
自分では十分だと思っている実務経験が、実際の求人市場でどう評価されるかは社内の感覚だけでは判断しづらい。エンジニア専門の転職エージェントの無料相談では、担当工程の棚卸し結果をもとに、書類選考を通過しやすい書き方や、狙える求人レンジの目安を確認できる。
無料キャリア相談で市場価値を確認する

SECTION 05SES・客先常駐から抜け出す場合に追加で見るべきこと

客先常駐でケーブルが絡み合うオフィスの迷路のような空間から、遠くの明るいスカイラインへ光の道が伸びている様子を描いた概念イメージ
SES・客先常駐では現場が変わり続けるため、実務経験を一貫した形で証明することが転職活動の最初のハードルになる。

SESで働いている場合、SIerの正社員と比べて追加で検討すべき論点がある。契約形態上、常駐先が変わるたびに担当業務や評価者が変わり、「一貫したキャリア」として語りにくくなる点だ。

対策としては、現場ごとの実務内容をSTEP1の棚卸しシートに時系列で残しておき、現場が変わるたびに更新することが有効だ。準委任契約か請負契約かによって、成果物に対する裁量の説明の仕方も変わってくるため、契約形態も合わせてメモしておくとよい。また、複数の現場を経験している場合は、職務経歴書上で現場ごとに区切るのではなく、「一貫して担ってきた役割」で束ねて書き直すと、採用担当者にとって読みやすくなる。

実際に転職を決めた後の退職交渉についても、SESは客先常駐先との調整が絡むため、通常の正社員以上に手続きが複雑になりやすい。退職の切り出し方や引き継ぎの進め方はエンジニアの退職交渉の進め方をまとめた記事で具体的な手順を扱っているので、内定後に確認しておくと動きやすい。

SECTION 06転職エージェントの選び方|SIer・SES出身者が使うべき窓口

SIer・SES出身者の転職では、Web系企業の求人だけでなく、上流工程への転職やユーザー系企業への転職も選択肢に入れて相談できるエージェントを選ぶと、比較検討の幅が広がる。総合満足度の観点ではレバテックキャリアの評判を運営会社データで検証した記事で扱っているとおり、IT・Web業界特化型は上流工程の求人も一定数保有している。大手SIerの求人を厚く持つエージェントとしてはGeeklyの評判を検証した記事も参考になる。マイナビITエージェントについては現時点で当サイトに評判記事がないため、マイナビITエージェントの評判は今後掲載予定だ。

いずれか1社に絞らず、複数登録して求人の重なり具合とコンサルタントとの相性を比較するのが実務的だ。「SIer歓迎」の表記だけを頼りに応募先を決めるのではなく、担当コンサルタントに実際の書類通過実績を確認してから応募先を絞り込むと、SECTION03で見た「書類で落ちまくる」状態を避けやすい。

よくある質問

SIerから転職するなら何年目がいいですか?
3年目前後がひとつの目安とされる。3年目は転職市場で「即戦力になりうる若手〜中堅」と評価されやすく、一連の工程を語れる最低限の実務経験が積み上がる時期でもある。ただし年次そのものより、SECTION04の棚卸しで「担当工程・成果・技術スタック」を具体的に語れるかどうかの方が評価に直結する。上流工程でのキャリアを志向するなら30歳手前まで、ユーザー系SIerを狙うなら30歳までを目安にする、という考え方もある。
SIerから転職するにはどうしたらいいですか?
まず担当工程と成果を言語化し(SECTION04 STEP1)、志望企業の技術要件とのギャップを特定する(STEP2)。ギャップがあれば個人開発やポートフォリオで補い(STEP3)、そのうえで職務経歴書の表現をWeb系企業が評価する言葉に翻訳する(SECTION03)。並行して複数の転職エージェントに登録し、書類通過実績のフィードバックを受けながら応募先を絞り込むと、ひとりで判断するより精度が上がる。
Web系に強い転職エージェントはどこですか?
IT・Web業界特化型のエージェントは、Web系企業の求人だけでなく上流工程やユーザー系企業の求人も併せて保有していることが多く、SIer・SES出身者の比較検討先として使いやすい。1社に絞らず複数登録し、求人の重なり具合とコンサルタントの提案内容を比較したうえで、メインで使うエージェントを決めるのが実務的だ。
IT系で1番稼げる職業は?
職種別に見ると、AI・機械学習エンジニア(平均756万円)、SRE・プラットフォームエンジニア(同708万円)、データエンジニア(同672万円)が上位に来る一方、マネジメント側ではプロジェクトマネージャー(693万円)やプリセールス(666万円)も高水準だ(マイナビ転職エージェント調べ)。「SIerかWeb系か」という業界の括りよりも、担う職種・役割が年収水準を左右する度合いの方が大きい。
SES(客先常駐)からいきなり自社開発企業への転職は難しいですか?
選考難易度は高い傾向にあるが、不可能ではない。自社開発企業は即戦力志向が強く、教育環境が整っていないケースも多いため、SECTION04で挙げた技術スタックのギャップ(本番運用経験、CI/CDなど)を個人開発などで事前に埋めておくことが重要になる。いきなり自社開発を狙うのが厳しい場合は、まず受託開発企業やWeb系寄りのSIerで実務経験を積み、そこから自社開発企業を目指すという段階的なルートも現実的な選択肢とされる。

参考・出典

  1. Geekly「SIerランキング!大手や年収・売上高上位企業【2026最新・総合版】」(有価証券報告書・EDINETベースの上位SIer平均年収データ)
    https://www.geekly.co.jp/column/cat-technology/sier-company_ranking/
  2. テックゴー「SESの平均年収はいくら?年齢・スキル別の相場と高収入を目指すコツ」(SES平均年収・年代別データ)
    https://tech-go.jp/it-engineer/ses/salary
  3. 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報」(産業別の所定外労働時間データ)
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cp/25cp.html
  4. 情報サービス産業協会(JISA)「2024年版 情報サービス産業基本統計調査」(ITエンジニアの平均残業時間データ)
    https://www.jisa.or.jp/Portals/0/report/basic2024report.pdf
  5. note「SIerからWeb系に転職した俺が全部話す|準備と本音」(書類選考の通過数・ポートフォリオ効果の実例)
    https://note.com/sota_career/n/n23f035ae8405
  6. マイナビ転職エージェント「ITエンジニアの職種別年収ランキング」(職種別の平均年収データ)
    https://mynavi-agent.jp/knowledge/it/284.html
福朗
福朗

フリーランスAIエンジニア。AIパイプライン開発と技術キャリアについて発信しています。

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