転職エージェントに登録すると、数日以内に「初回面談」の案内が来る。ここで身構えすぎて職務経歴書を分厚く作り込んだり、逆に「面接みたいに落とされたらどうしよう」と不安になったりするエンジニアは多い。 結論から言うと、初回面談は合否のある選考ではない。何を聞かれ、何を準備しておけば時間を無駄にしないかを、実際に各社が公開している面談内容と、IT特化型エージェントの傾向から整理する。
初回面談は「面接」ではない ― まず区別すべき3つの違い
「面談」と「面接」は言葉が似ているせいで混同されやすいが、目的も主導権も別物だ。マイナビ転職や複数の人材紹介会社の案内でも、初回面談の所要時間はおおむね30分〜1時間程度とされており、これは企業との一次面接よりも短く、雑談に近い温度感で進むことが多い[1]。
| 項目 | 初回面談(エージェント) | 一次面接(企業) |
|---|---|---|
| 目的 | 経歴・希望条件のヒアリングと、紹介する求人の選定 | 合否判定 |
| 主導権 | 求職者側が経歴・希望を話す時間が中心 | 企業側の質問に答える時間が中心 |
| 結果 | 合格・不合格という概念はない | 合格・不合格がある |
| 服装 | オンラインなら清潔感のある普段着でも可 | スーツまたはオフィスカジュアルが基本 |
| 所要時間の目安 | 30分〜1時間程度 | 30分〜1時間、複数回に分かれることも |
つまり初回面談で聞かれることの大半は「あなたを落とすための質問」ではなく「あなたに合う求人を探すための質問」だ。この前提を持っておくだけで、答え方の力の入れどころが変わる。
初回面談で実際に聞かれる8つの質問と回答の型
各社の面談内容の解説記事や体験談を横断すると、聞かれる内容はおおむね次の8項目に集約される。エンジニアの場合、1と6・7は非エンジニア向けの一般的な転職エージェント記事にはあまり出てこないが、IT特化型エージェントでは実際に踏み込んで聞かれることが多い項目だ。
Q1これまでの職務経歴と技術スタック
「直近のプロジェクトではどんな技術構成で、どの工程を担当していましたか?」
意図紹介できる求人の技術要件とのマッチング精度を上げるため。レバテックキャリアのようなIT特化型エージェントでは、使用言語・フレームワークまで具体的に踏み込んでヒアリングする傾向がある[2]。
回答の型プロジェクト単位で「期間・役割・使用技術・担当工程(要件定義〜運用のどこか)」を時系列で並べて話すと伝わりやすい。技術スタックは事前に「言語/フレームワーク/インフラ・クラウド/開発手法」の4分類で棚卸ししておくと、口頭でも詰まらない。
Q2転職を考えたきっかけ・理由
「今の会社を離れたいと思ったきっかけは何ですか?」
意図希望条件の背景を理解するため。同時に、その理由を職務経歴書や本番の面接でそのまま口にすると印象が悪くなるケースがあるため、事前に言い換えを一緒に整理する目的も含まれる。
回答の型不満をそのまま話すより「〇〇という制約があり、△△を実現したいので転職を考えている」という課題→希望の形に変換しておく。技術的な理由(レガシー環境からの脱却、裁量の少なさなど)は具体的なほど信頼度が上がる。
Q3希望条件(年収・働き方・リモート)
「希望年収と、絶対に譲れない条件を教えてください」
意図求人の絞り込み精度を上げるため。条件が曖昧なまま進むと、ミスマッチな求人が増えて双方の時間を消費する。
回答の型MUST(譲れない)とWANT(できれば)を分けて伝える。例:MUST=現年収を下回らない・フルリモート可、WANT=技術選定への裁量、モダンな技術スタック。
Q4他のエージェントの利用状況・選考の進み具合
「他にも登録しているエージェントはありますか?並行して選考が進んでいる企業はありますか?」
意図重複紹介や日程調整のミスを避けるため。複数のエージェントに登録すること自体は一般的で、正直に答えて不利になることはない。
回答の型登録社数と、進んでいる場合は選考フェーズ(書類・面接段階など)まで伝えると、紹介ペースを調整してもらいやすい。
Q5キャリアビジョン(3年後・5年後)
「3年後、5年後にどんなエンジニアになっていたいですか?」
意図単発の転職先ではなく、中長期のキャリアパスに沿った提案をするため。
回答の型「技術的な方向性(専門性を深める/マネジメントに進む など)」と「働き方の希望」を分けて話すと整理しやすい。まだ固まっていない場合は、正直にその旨を伝えて相談する姿勢でも問題ない。
Q6SES・自社開発・受託への志向
「これまでSES中心でしたか?今後は自社開発と受託、どちらに関心がありますか?」
意図紹介する求人の性質を絞るため。エージェントによって取り扱う求人のSES比率は異なるため、逆にこちらから「取り扱い求人のSES比率」を尋ねる価値もある。
回答の型SES経験がある場合は「常駐先での役割・裁量」を具体的に話すと、単なる客先常駐歴ではなく実務経験として伝わる。
Q7GitHub・ポートフォリオの有無
「GitHubのアカウントや、公開できる制作物はありますか?」
意図ポートフォリオ提出が必須と求人票に明記されている案件向けの参考情報。フロントエンドなど一部の職種を除き、無くても選考自体に不利になるとは限らない。
回答の型無い場合は正直に「ない」と伝えればよい。業務外のリポジトリがあれば、README等で内容が伝わる状態にしておくと紹介の幅が広がる。
Q8転職希望の時期
「いつ頃までに転職したいと考えていますか?」
意図求人紹介のペース調整のため。
回答の型「良い求人があれば」という曖昧な回答でも問題ないが、在職中で退職交渉に時間がかかりそうな場合など、時期感を伝えておくと紹介の精度が上がる。
エンジニアだから深掘りされやすいこと・されないこと
初回面談の場でコーディングテストのような技術力そのものを試されることは基本的にない。技術力の評価は、選考が進んだ後に企業側が実施する範囲だ。
一方で、レバテックキャリアやGeeklyのようなIT・Web業界特化型のエージェントは、担当者自身が技術用語への理解度が高いケースが多く、「その言語のどのバージョンを使っていたか」「チーム構成は何人で、どの役割だったか」まで解像度高く聞かれる傾向がある[2]。総合型エージェントとの面談しか経験がないと、この深掘りに面食らうことがあるため、技術スタックの棚卸しは面談前に済ませておきたい。担当者ごとの当たり外れについては、レバテックキャリアの評判を扱った記事でも運営会社データをもとに検証している。
面談前に準備しておく5つのこと
職務経歴書(技術スタック表つき)
プロジェクトごとに期間・役割・使用技術を整理しておくと、口頭説明もスムーズになる。
転職理由の言い換え
不満を「課題→今後実現したいこと」に変換した一言をあらかじめ用意する。
希望条件のMUST/WANT整理
年収・働き方・リモート可否などを、譲れない条件と希望条件に分けておく。
GitHub・ポートフォリオ(該当する場合のみ)
公開できるリポジトリがあれば、内容が伝わる状態にしておく。無理に新規作成する必要はない。
逆質問リスト
面談は聞かれるだけの場ではない。次章のリストを参考に3つ程度用意しておく。
準備ができたら、まず1社で面談を体験してみる
ハイクラス求人に強いエージェントで、実際の面談の雰囲気と紹介される求人の質を確かめておくと、他社と比較する際の基準ができる。
面談で聞いておくべき逆質問リスト(エンジニア視点)
初回面談は担当者を見極める場でもある。以下のような質問を用意しておくと、エージェント・担当者の得意領域が見えてくる。
- 「得意な業界・職種、直近で決定実績が多いポジションは?」
- 「取り扱い求人のうち、SESと自社開発・受託の比率はどのくらい?」
- 「自分と似た経歴・希望条件で、直近成約した事例はある?」
- 「進捗確認や連絡の頻度はどのくらい?」(連絡が途絶えた場合の見極め方は転職エージェントが音信不通になったときの対応で詳しく整理している)
- 「他のエージェントと併用しても問題ない?」(複数登録の考え方はエージェントの複数登録は何社が正解かを参照)
答えにくい質問への対処法
転職回数が多い
IT業界は転職に対する許容度が比較的高く、回数そのものより「なぜそのタイミングで移ったか」の一貫性が見られる。各社の転職理由をひとことで説明できるように整理しておけば、大きなマイナス材料にはなりにくい。
経験社数が少ない・在籍年数が長い
経験の幅ではなく深さで語る。1社での在籍が長い場合は、その中で担当した技術領域の広がりや役割の変化を時系列で説明するとよい。
離職期間・ブランクがある
期間中に取り組んだ学習内容、資格取得、個人開発など、空白期間の使い方を具体的に説明できれば問題視されにくい。ごまかさず、正直に伝える方が信頼につながる。
初めてエージェントを使う場合の注意点
初めて転職エージェントを使う場合は、面談の内容以前に「どのエージェントを選ぶか」でつまずきやすい。判断基準はエンジニアが初めて転職エージェントを選ぶ判断基準にまとめている。また、エージェントの利用自体は無料だが、その仕組みを理解しておくと面談での質問もしやすくなる。手数料の内訳は転職エージェントは本当に無料?費用の仕組みで解説している。
なお、初回面談を突破した後の本番の企業面接では、技術面接ならではの逆質問の作法が必要になる。これは初回面談とは評価の軸が異なるため、面接本番での逆質問のコツとして別記事で扱う予定だ。