エンジニアの年収交渉のやり方|内定〜オファー面談で使う手順と例文【2026年版】
内定の連絡と一緒に届いた提示額が、想定より少し低い。このまま承諾するか、一度だけ交渉するか——判断の猶予は内定承諾の期限までしかありません。
この記事で扱うのは転職時のオファー交渉だけです。内定が出てから承諾するまでの間に、①相場を確認する → ②根拠をつくる → ③オファー面談で伝える(例文つき) → ④断られたときに対応する、の4ステップをまとめました。交渉をエージェントに任せる場合の注意点は年収交渉をエージェントに任せる前に知っておく「交渉代行」の3類型で詳しく説明しています。
年収交渉は「内定後〜承諾前」に1回で済ませる
転職の年収交渉は、内定が出てから内定承諾書を出すまでの間に行います。企業はすでに採用を決めていて、あとは承諾をもらうだけの状態です。一方で候補者側は「承諾するかどうか」を決められるので、選考中よりも条件の話を切り出しやすくなります。多くの企業はこの段階でオファー面談(条件面談)を設けており、給与や働き方を確認する場が用意されています。
(現年収比・リクルートエージェント)
(現年収比・Geekly Media)
(求人ボックス・2026年9月2日更新)
リクルートエージェントの解説では、希望年収は現職の年収の1割程度を目安に決め、自分の事情を加味するよう勧めています。Geekly Mediaは「現年収の+10%前後が基本で、上限は+20%」を目安としています。どちらも業界の目安であって、応募先の給与テーブルで上限が決まる点は変わりません。
承諾期限を先に確認しておく
エンジニアの中途採用では、回答期限が数日しかないこともあります。交渉のやり取りで1往復するだけでも数日かかるため、内定の連絡を受けたらすぐに承諾期限を確認し、足りない場合は交渉より先に期限延長を相談します。延長依頼の伝え方と断られたときの判断基準は内定承諾の期限交渉の切り出し方にまとめています。
避けたほうがいいタイミング
① 一次・二次面接の途中(採用が決まる前に年収の話ばかりすると、評価の焦点がずれる)
② 内定承諾書を出した後(承諾後の再交渉は、信頼を大きく損なう)
③ 回答期限の当日・期限切れ後(「ほかの会社で迷っている」と受け取られやすい)
STEP1 相場を確認する:求人ボックスの「平均」は中央値
最初にやるのは、希望額の根拠になる相場を集めることです。参照先は①求人データの相場、②応募先の求人票レンジ、③スカウトや他社オファーの実提示額の3つです。
① 求人データの相場(職種別)
手軽に確認できるのが求人ボックスの給料ナビです。ただし、ページに表示される「平均年収」は、注記によると集計対象求人における給与水準の中央値で、算術平均ではありません。また、掲載中の求人から毎月計算し直すため、数値は月ごとに変わります。交渉に使うなら、確認した日付をメモしておくことをおすすめします。
| 職種(求人ボックスの分類) | 「平均年収」(=求人給与の中央値) | 給与幅 |
|---|---|---|
| ITエンジニア | 442万円 | 346〜943万円 |
| Webエンジニア | 464万円 | 337〜967万円 |
| フロントエンドエンジニア | 490万円 | 355〜1,033万円 |
| インフラエンジニア | 510万円 | 349〜1,016万円 |
| セキュリティエンジニア | 600万円 | 385〜1,171万円 |
| AIエンジニア | 626万円 | 392〜1,242万円 |
出典:求人ボックス 給料ナビ(各職種ページ、2026年9月2日更新)。数値は求人票の給与水準から計算したもので、実際の年収(本人の受取額)とは違います。
求人データは「募集時の提示額」なので、経験年数やスキルでの差はほとんど見えません。中央値は自分の立ち位置をざっくり確認するために使い、希望額の根拠は②③で固めます。職種ごとの詳しいデータは、AIエンジニアの年収やSREエンジニアの年収(本人申告の中央値と求人分析)で整理しています。年収1,000万円を狙う場合のキャリアルートはエンジニア年収1000万の壁を越える5つのルートを参照してください。
② 応募先の求人票レンジ
交渉で実際に上限を決めるのは、応募先の求人票に書かれた年収レンジと、その会社の等級(グレード)制度です。求人票が「500〜700万円」なら、根拠なくレンジを大きく超える額を求めても通りにくいです。提示額がレンジの下の方なら「どの等級で評価されたのか」を聞くのが交渉の入口になります。
③ スカウト・他社オファーの実提示額
いちばん強い根拠は、他社があなた個人に提示した金額です。求人票の年収は幅が広い一方、スカウトやオファーの金額は、あなたの経歴を見たうえでの具体的な評価です。Findy・LAPRASのようにGitHubなどの公開情報からスキルを可視化するサービスや、OpenWorkのような社員口コミでの企業別年収も、補助的な材料として使えます(Findyの実態はFindyの評判で検証しています)。
スカウトを複数受け取っておくと、自分にどのくらいの提示が来るのかレンジがつかめます。サービスの選び方はエンジニア向け転職エージェント9選の機能比較にまとめています。
複数のエージェント/スカウトサービスに登録しておけば、現在の提示額レンジが客観的に見えてきます。これが交渉時の「数字の根拠」になります。
自分の市場価値を確認するSTEP2 根拠をつくる:実績をエビデンスに変換する
相場がわかったら、次は「なぜ自分はその額に見合うのか」を説明できるようにします。オファー面談で出す根拠は、現年収(源泉徴収票ベース)・他社の提示額・実績の3種類です。このうち自分で質を上げられるのは実績だけなので、ここに時間をかけます。
エンジニアが使えるエビデンス5パターン
| パターン | 書き方の例(数値は自分の実績に置き換える) |
|---|---|
| ① 事業KPI貢献型 | 「検索改善でCVRが○%→○%に上昇」「決済機能のリリースで売上に○○万円貢献」 |
| ② コスト削減型 | 「インフラ構成を見直してクラウド費用を月○○万円→○○万円に削減」 |
| ③ 開発生産性型(DORA系) | 「デプロイ頻度を週1回→日次に」「MTTRを○時間→○分に短縮」「変更失敗率を○%→○%に改善」 |
| ④ 組織貢献型 | 「中途○名のオンボーディングを設計し、○か月で独り立ち」「社内ライブラリが○チームで採用」 |
| ⑤ 外部評価型 | 「カンファレンス登壇」「OSSメンテナンス」「技術ブログの継続発信」 |
面談で出すのは2〜3パターンから3点までで十分です。数が多いと焦点がぼやけますし、1パターンだけだと「その分野が得意なだけ」と見られやすくなります。
「技術の説明」ではなく「事業への影響」に翻訳する
オファー金額を決めるのは、現場のエンジニアではなく人事や決裁者であることが多いです。技術的にどれだけ難しかったかよりも、事業の数字にどう効いたかで書くと伝わりやすくなります。
NG: 技術ベース表現
Kubernetes Clusterのオートスケーリング設定を最適化し、HPAとClusterAutoscalerの連動を改善した
OK: 事業価値ベース表現
本番環境のインフラコストを月○○万円→○○万円に削減。技術的にはオートスケーリング設定の最適化で実現
希望額は「根拠のある数字」と「下限」を分けて決める
- 希望額(レンジ): 現年収の1割増しを基準に、他社提示額・求人票レンジ・実績を踏まえて決める
- 下限(ここを下回ったら辞退を考える額): 自分の中だけで決め、面談では口にしない
- 代わりの条件: ベース年収が動かない場合に、代わりに求める条件(STEP4で解説)を先に決めておく
STEP3 オファー面談で伝える(例文つき)
オファー面談での基本の流れは「感謝→事実→根拠→希望→歩み寄り」の5ステップです。例文の数値や固有名詞は、自分の状況に置き換えて使ってください。
ステップ1: 感謝と入社意欲を伝える
最初に内定へのお礼と入社したい気持ちを伝えます。これがないと、交渉が「条件次第で辞退します」という冷たい印象になってしまいます。
ステップ2: 提示額についての事実を伝える
「提示額が不満」ではなく、事実として伝えます。「少ない」「低い」といった主観的な言葉は入れません。
ステップ3: 根拠となる実績を3点伝える
① マイクロサービス分割を主導し、デプロイ頻度を週1回から日次まで引き上げた
② 既存APIのレスポンス改善でp95を○○ms→○○msに短縮し、インフラ費用も月○○万円削減した
③ 後輩エンジニア○名のメンタリングとコードレビューの仕組みを整えた
といった成果があります。御社の求人要件にあるSREロールの拡張にも直接活かせると考えています。
ステップ4: 希望額をレンジで伝える
1つの金額ではなく幅(レンジ)で伝えると、企業側も社内で調整しやすくなります。等級制度がある会社なら「等級の見直し」という言い方にすると話が進みやすいです。
ステップ5: 歩み寄りの余地を残す
「この額でなければ無理」と聞こえる言い方は避けます。条件の組み方に柔軟性を残しておくと、企業側も別の案を出しやすくなります。
メールで伝える場合の例文
面談の日程がすぐに取れない場合や、エージェントを通さず直接応募した場合は、まずメールで相談を入れて、詳しい話は面談か電話でする流れが無難です。
株式会社○○ 採用ご担当者様
お世話になっております。○○(氏名)です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。御社で働きたいという気持ちに変わりはございません。
ご提示いただいた年収○○万円について、一点ご相談させてください。現職の年収が△△万円であることに加え、これまで担当してきた○○(実績を1行で)を御社の○○領域でも活かせると考えております。
大変恐縮ですが、年収○○〜○○万円の範囲でご再考いただくことは可能でしょうか。ベース年収での調整が難しい場合は、等級や入社後の評価タイミングなど、御社で検討しやすい形でご相談できれば幸いです。
承諾期限の○月○日までにお返事できるよう進めたく、お手数ですが面談またはお電話でお話しする機会をいただけますと幸いです。
複数の内定がある場合
他社のオファーは、交渉の材料として最も説得力があります。ただし、金額だけで比べると入社後の後悔につながりやすいです。オファーレターの内訳(基本給・固定残業・賞与・等級)を揃えてから比べるのが前提になります。年収以外の軸(裁量・技術的負債・成長機会)も含めた比べ方はエンジニアの複数内定を「3層」で比較する方法を参照してください。
エージェント経由の内定なら、担当者が企業とのやり取りを代わりに進めてくれる場合があります。どこまで代行してくれるかは会社や担当者によって違うため、登録時の面談で確認しておきましょう。
交渉に強いエージェントを探すSTEP4 断られたときの対応
交渉しても、提示額が変わらないことは普通にあります。断られても内定そのものがなくなるわけではないので、落ち着いて次の手を順番に試します。
1. 理由を聞く(等級か、予算か)
理由が「等級の評価」なら、入社後の評価タイミングを交渉します。「ポジションの予算上限」なら、ベース年収以外の条件に切り替えます。
2. ベース年収以外の条件に切り替える
- 初期等級(グレード): 入社時の等級が1段上がると、その後の昇給の基準も上がります。等級制度がしっかりした会社ほど、金額よりこちらの方が通りやすいです
- 入社後の評価見直しを書面で残す: 「入社○か月後に等級を見直す」と約束してもらえるなら、口約束ではなく書面やメールで残してもらいます
- サインオンボーナス(入社一時金): 給与テーブルを変えずに初年度の収入を上乗せできる方法です。制度があるかどうかは会社によります
- ストックオプション/RSU: スタートアップや外資では付与数を相談できる場合があります。権利確定(ベスティング)の条件も一緒に確認します
- 働き方: リモート勤務の比率、フレックス、副業の可否など、金額以外の条件です
3. 回答は持ち帰り、期限内に判断する
その場で承諾・辞退を決める必要はありません。「検討して○日までにお返事します」と伝えて持ち帰ります。判断の時間が足りなければ、承諾期限の延長を相談します(延長依頼の型と断られたときの判断基準)。承諾するなら、最終的な条件が労働条件通知書(または雇用契約書)に反映されているかを確認してから承諾書を出します。
万が一、入社後に「聞いていた条件と違う」ことがわかった場合の対処法は、エンジニア転職で年収が下がった時の対処法にまとめています。
内定取り消しにつながるNG行動
適切な伝え方をすれば、交渉したこと自体で内定が取り消されることはまずありません。問題になるのは、次のような伝え方やタイミングです。
NG1: 求人票のレンジから大きく外れた要求
求人票に「500〜700万円」とあるのに、根拠なく「900万円」を求めると、求人内容を読んでいないと思われます。レンジを超える額を求めるなら、他社のオファーなど具体的な根拠が必要です。
NG2: 他社のオファーを「脅し」に使う
NG: 武器化
「他社からも内定もらってるんですが、もう少し出してもらえないと困ります」
OK: 事実情報
「現在、他社からも〇〇万円レンジでオファーをいただいている状況です。御社が第一志望なので、整合する形でご相談できればと思っています」
NG3: 内定承諾後の再交渉
一度書面で承諾した条件を、入社直前に交渉し直すのは避けてください。気になる条件はすべて、承諾前に解消しておきます。
NG4: 期限を過ぎても返事をしない
回答期限を過ぎても連絡しないと、企業は「ほかの会社に決めた」と判断して別の候補者の選考を進めます。交渉中でも「○月○日までにお返事します」と期限をはっきり伝えるのが基本です。
エージェント経由なら誰が交渉するか
エージェント経由の内定では、交渉を担当者に任せられることがあります。ただし「年収交渉サポート」の中身は会社によって違います。たとえばリクルートエージェントの解説ページでは、企業と直接交渉するのではなく、希望年収の妥当性や伝え方をアドバイスする立場だと説明されています。
| 進め方 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| エージェントに任せる | 自分で金額を切り出すのが苦手、複数社を同時に受けている | 担当者によって交渉力の差が大きい。どこまで代行してくれるか事前に確認する |
| 自分で交渉する(直接応募) | 第一志望が決まっていて、相場と自分の根拠を用意できている | 断られた後のやり取りも自分で進める必要がある |
| 組み合わせる | エージェント・スカウト・リファラルなど複数ルートで内定がある | 各社の回答期限と意思決定のスピードを管理する手間がかかる |
エージェントに任せる場合でも、STEP1〜2で集めた材料(現年収・他社の提示額・実績3点・希望レンジ・下限)は自分で用意して渡します。担当者に渡す材料と面談で確認すべき質問は「交渉代行」の3類型と渡すべき5つの材料で解説しています。転職活動全体の流れはエンジニア転職活動の進め方|3ヶ月完結ロードマップ、30代の方は30代エンジニア転職「年齢の壁」分解ガイドもあわせて読んでみてください。
補足:社内の昇給交渉について
転職せずに今の会社で年収を上げたい場合、オファー交渉とは進め方が違います。評価面談の場で初めて切り出しても遅いので、評価期間の始めに「次の査定で等級を上げたい」と上司に伝え、期初の目標・数値化した成果・市場相場とのギャップ・希望等級をA4一枚にまとめて事前に渡すのが基本です。上司がその資料をそのまま評価会議で使えるように、STEP2と同じく「事業への影響」で書きます。他社のオファーを理由に「上げてくれないと辞める」と迫る方法は、関係を壊しやすいのでおすすめしません。
承諾前の最終チェックリスト
最終的な提示を受けたら、すぐに承諾せず、次の項目を確認してから決めてください。
内定承諾前の10項目チェック
- 提示年収が、STEP1で調べた相場と求人票レンジのどのあたりか把握したか
- 基本給・賞与・固定残業代の内訳が書面で示されているか
- 固定残業代がある場合、何時間分で、超えた分が別途支払われるか
- 評価制度と昇給のルールが説明されているか
- 交渉で合意した内容(等級・評価見直しの時期など)が書面に残っているか
- 直属の上司やチームメンバーと話す機会があったか
- 退職金・確定拠出年金の有無を確認したか
- SO/RSUがある場合、権利確定(ベスティング)のスケジュールを確認したか
- 勤務形態(リモートの可否、出社頻度)が書面に書かれているか
- 労働条件通知書の内容が、面談で聞いた条件と一致しているか
年収交渉は駆け引きではなく、自分の市場価値を企業に正しく評価してもらうための確認作業です。相場・根拠・例文・断られたときの対応を用意しておけば、気まずさを最小限に抑えて、1回の交渉で納得できる条件にたどり着けます。
転職後に後悔しないためには、エンジニア転職で失敗する7つのパターンもあわせて確認しておくと安心です。
スカウトサービスやエージェント面談を利用すると、複数社の具体的な提示額を集めやすくなります。これが年収交渉のスタート地点です。
参考・出典
求人ボックス 給料ナビ「ITエンジニア」「Webエンジニア」「フロントエンドエンジニア」「インフラエンジニア」「セキュリティエンジニア」「AIエンジニア」の年収・時給(2026年9月2日更新。「平均年収」は集計対象求人の給与水準の中央値)
リクルートエージェント「転職エージェントに年収交渉は可能? 交渉のポイントやタイミング・年収相場を解説」 https://www.r-agent.com/guide/agent/26787/ (希望年収は現年収の1割程度が目安)
Geekly Media「転職の年収交渉相場はいくらまで? 年収アップできる給与交渉の方法」 https://www.geekly.co.jp/column/cat-jobsearch/2007_035/ (現年収+10%前後が基本、上限+20%が目安)
本記事の数値は2026年9月30日時点で確認したものです。交渉の結果は、個人のスキル・経験と応募先の給与制度によって変わります。




