エンジニア転職のタイミングはいつ?求人倍率7年分で見えた「12月が有利」の理由と、入社月から逆算する着手時期【2026年10月版】
「エンジニアの転職は何年目がいいか」「何月に動けばいいか」。上位の解説記事は、だいたい「求人が増えるのは2〜3月と9〜10月」「3年目がベスト」と書いています。ただ、その根拠となる数字はほとんど載っていません。
この記事では、dodaが毎月出している転職求人倍率のうち「エンジニア(IT・通信)」の2019年1月〜2026年8月の月別データを並べ直しました。そこに賞与の支給ルールと、退職を申し出てから辞めるまでに必要な日数を重ねて、「いつ動き出すか」を自分で決める手順にまとめています。
- IT系エンジニアの求人倍率は、2019〜2025年の7年すべてで12月が年間最高だった。最も低いのは5〜7月。ただし12月に上がるのは求人が増えるからではなく、転職希望者(ライバル)が減るから。
- 季節による差は2割強ある。それでも、賞与の支給日・退職の申し出期限・プロジェクトの区切りといった「会社側の都合」のほうが、損得への影響は大きい。
- 2026年10月に動き出すなら、2027年4月入社から逆算するのが基本。10月に準備、11〜12月に応募と面接、冬の賞与を受け取ってから退職を申し出る流れになる。
判断材料は「市場」「会社」「自分」の3つに分けて考えます。
MARKET「求人が多い月」はデータで見ると本当か
IT系エンジニアの求人倍率は、毎年12月が最も高い
doda転職求人倍率は「求人数 ÷ 転職希望者数」で計算される値です。職種別の「エンジニア(IT・通信)」は、2026年8月時点で12.04倍でした(全職種の平均は2.86倍)。
この職種の月別の値を年ごとに見ると、2019年から2025年まで、7年連続で12月が年間で最も高くなっています。年間で最も低い月は、7年のうち5年が5月でした(2019年は6月、2020年は7月)。
| 年 | 最高の月(倍率) | 最低の月(倍率) | 翌年1月の倍率 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 12月(9.88倍) | 5月(6.37倍) | 9.25倍 |
| 2022年 | 12月(12.09倍) | 5月(8.60倍) | 11.17倍 |
| 2023年 | 12月(13.28倍) | 5月(9.83倍) | 12.06倍 |
| 2024年 | 12月(14.15倍) | 5月(11.02倍) | 12.77倍 |
| 2025年 | 12月(13.36倍) | 5月(10.51倍) | 11.83倍 |
出典: doda「転職求人倍率レポート(データ)」職種別・エンジニア(IT・通信)。2026年9月17日発表分までを当サイトで集計。
ただ、この期間は倍率そのものが年々上がっています(2019年の平均は約4.8倍、2024年は約12.2倍)。年平均と比べるだけでは、季節の影響と上昇トレンドが混ざってしまいます。そこで、各月の値を前後12か月の移動平均で割って、季節だけの影響を取り出しました。
エンジニア(IT・通信)求人倍率の季節指数(100=その時期の平均的な水準)
2019年1月〜2026年8月の月次データ。2×12か月の中心移動平均に対する比率を、月ごとに平均した値(当サイト算出)
12月の指数は117で、7年分のどの年も115〜119の間に収まっていました。毎年ほぼ同じ形で起きている、偶然ではない動きです。逆に6〜7月は92前後で、12月とは25ポイントほどの差があります。
12月に倍率が上がるのは「ライバルが減る」から
ここで注意したいのは、倍率が上がる理由です。dodaの2025年12月分レポート(全職種)を見ると、中身はこうなっています。
- 求人数: 前月比 +2.6%
- 転職希望者数: 前月比 −6.4%
dodaは「12月の転職希望者数は、例年年末に向けて減少する」と説明しています。そして翌2026年1月は、求人数が+0.3%とほぼ横ばいだったのに対し、転職希望者数が前月比+15.5%と急増しました。dodaはその理由を「新年度や4月入社を見据えた活動が活発化する」ためとしています。
読み替えるとこうなります。求人そのものは月ごとに数%しか動きません。季節で大きく変わるのは「同じ求人に応募してくる人の数」です。競合記事のいう「求人が増える時期を狙う」より、「ライバルが減る11〜12月に選考を進めておき、1月に応募が増える前に面接を終える」ほうが、データに合った動き方です。
9〜10月が「求人の多い時期」とよく言われますが、IT系エンジニアの季節指数では9月が101、10月が98で、平均並みでした。2〜3月も100と103です。少なくとも倍率で見る限り、「この2つの時期が特別に有利」とは言えません。
この数字を使うときの3つの注意
- doda1社のデータであること。他の転職サービスでは季節の形が違う可能性があります。
- 職種は「直近の仕事」で分類されていること。dodaの注記によると、転職希望者の職種は希望する職種ではなく、直近の仕事の職種です。今エンジニアとして働いている人が、エンジニアの求人に応募する場合の目安になります。
- 12倍は「どこでも受かる」という意味ではないこと。求人の多くは「実務経験◯年以上」などの条件付きです。倍率は市場全体の需給を表す値で、個人の内定率ではありません。
COMPANY市場より損得に響く「会社側の時計」
季節による差は2割強あります。ただ、損得に直接響くのは会社側のルールです。退職日が1か月ずれるだけで、賞与を1回分まるごと受け取れなくなることもあります。応募を始める前に、次の4つを就業規則と賃金規程で確認してください。
① 賞与の「支給日在籍要件」と査定期間
多くの会社の賃金規程には「賞与は支給日に在籍している者に支給する」という条項(支給日在籍要件)があります。最高裁は大和銀行事件(昭和57年10月7日判決)で、こうした規定が就業規則に明記され、内容が合理的であれば有効だと判断しました。つまり、支給日より前に退職すると、査定期間中にずっと働いていても賞与を受け取れない可能性があります。
確認するのは次の3点です。
- 支給日(冬なら12月の何日か)
- 在籍要件の有無(「支給日に在籍」なのか、「査定期間の末日に在籍」なのか)
- 査定期間(冬の賞与がどの期間の評価にもとづくか)
支給日に在籍していれば、受け取ったあとに退職を申し出ても賞与は受け取れます。夏の賞与を基準にしたスケジュールはボーナス後のエンジニア転職スケジュールで詳しく扱っています。この記事では冬の賞与を基準にします。
② 退職の申し出期限
期間の定めのない雇用(正社員)では、民法627条1項により、退職の申し入れから2週間で雇用契約は終わります。とはいえ実際には、多くの会社の就業規則が「1か月前まで」などと定めていて、引き継ぎもあります。内定承諾から入社まで、1〜2か月はかかると考えておくのが現実的です。進め方はエンジニアの退職交渉の進め方を参照してください。
③ 有給休暇の残日数とプロジェクトの区切り
有給が多く残っているなら、最終出社日から退職日までを有給消化にあてる分、入社日は後ろにずれます。何日かかるかは引き継ぎの量しだいです。見積もり方は有給消化交渉と引き継ぎ日数の記事にまとめています。リリースや移行作業の直前に抜けると、引き止めが長引きやすくなります。プロジェクトの区切りがどこにあるかも、退職を申し出る日を決める材料になります。
④ 株式報酬・退職金の権利が確定する時期
RSU(譲渡制限付株式ユニット)やストックオプションがある会社では、「付与から1年経たないと権利が確定しない」といった条件(クリフ)や、四半期ごとの確定日が決まっていることがあります。退職金も、規程によっては勤続年数が一定に満たないと支給されません。あと1〜2か月で金額が大きく変わる権利がないか、制度の書類で確認しておきます。
- 冬の賞与の支給日と、在籍要件の書き方(賃金規程)
- 退職を何日前までに申し出る決まりか(就業規則)
- 有給休暇の残日数と、時効で消える日数
- 担当プロジェクトのリリース日・区切り
- RSU・ストックオプションの次の確定日、退職金の勤続年数の条件
YOU「何年目が正解」より「何を説明できるか」
上位の記事は「3年目がベスト」とよく書いています。ただ、企業が見ているのは年数そのものではありません。応募する求人の必須要件を、自分の実務で満たしていると説明できるかです。経験年数は、その説明のしやすさを測るおおまかな目安にすぎません。
| 経験年数 | 主に見られる点 | 今動くべきサイン | 待ったほうがいいサイン |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | 伸びしろ・学習の習慣・辞める理由に納得できるか | 心身の不調、違法な長時間労働、開発の仕事に就けない | 「なんとなく合わない」だけで、説明できる実績がまだない |
| 1〜3年 | 担当した工程・技術スタック・自分で手を動かした範囲 | 同じ保守作業の繰り返しで、新しい工程を経験できない | 半年以内に設計や上流工程を任される予定が決まっている |
| 3〜5年 | 任された範囲と成果(性能・障害件数・リードタイムなどの数字) | 求人票の「実務経験3年以上」を、具体的な実績で埋められる | リード経験の目前で、実績になる前に抜けることになる |
| 5年以上 | 設計判断・チームへの影響・事業成果との結びつき | 今の会社の等級制度では、上のポジションが空かない | 株式報酬の確定や昇格の時期が近く、転職先の提示額で埋め合わせられない |
「早く辞めるのは不利なのでは」という不安もよく聞きます。参考までに、厚生労働省の調査では、2022年3月に卒業した大卒者のうち33.8%が就職後3年以内に離職しています。3年以内に辞めること自体は珍しくありません。問われるのは、なぜ辞めるのか、次の職場で何をしたいのかを筋道立てて説明できるかです。30代で「年齢の壁」が気になる人は、30代エンジニア転職の「年齢の壁」分解ガイドで、前半・後半で評価軸がどう変わるかを整理しています。
PLAN入社月から逆算する:2026年10月に動き出す場合
3つの時計を重ねて、具体的な日程に落とし込みます。かかる期間の目安として、厚生労働省「令和2年転職者実態調査」の、転職活動を始めてから前の勤め先を辞めるまでの期間を見ておきます。
| 転職活動を始めてから前職を離職するまで | 割合 |
|---|---|
| 1か月未満 | 18.3% |
| 1か月以上3か月未満 | 28.8% |
| 3か月以上6か月未満 | 15.7% |
| 6か月以上1年未満 | 8.8% |
| 1年以上 | 3.9% |
| 転職活動期間なし | 23.6% |
出典: 厚生労働省「令和2年転職者実態調査」個人調査 表19(全産業・全職種。不明1.1%を除く)。「6か月以上1年未満」「1年以上」は元の区分を当サイトで合算。
活動した人の多くは半年以内に前職を辞めています。在職中に準備から退職までを進めるなら、4〜6か月を見ておけば無理のない日程になります。
プランA:2027年4月入社(基本形)
- 10月棚卸しと書類づくり職務経歴書を作り直し、エージェントとの面談やスカウト登録を済ませる。就業規則で賞与と退職のルールを確認する。
- 11月応募を始める本命と、練習を兼ねた応募先を並行して出す。書類選考には1〜2週間かかる前提で、早めに出しておく。
- 12月面接を集中して進める倍率が年間で最も高く、ライバルが少ない時期。年末年始休暇で選考が1〜2週間止まることも織り込む。冬の賞与は在籍したまま受け取る。
- 1月最終面接・内定・承諾転職希望者が急増する前に、最終面接まで進んでおく。内定の比較と承諾期限の交渉をしたうえで、退職を申し出る。
- 2〜3月引き継ぎと有給消化引き継ぎの資料を作り、最終出社日のあとに有給を消化する。
- 4月入社年度の始まりに合わせて入るので、オンボーディングや新しいプロジェクトに入りやすい。
応募から内定までの各段階で何を見られるかはエンジニア転職活動の進め方(3か月ロードマップ)に、内定の承諾期限を延ばしてもらう頼み方は内定承諾の期限交渉にまとめています。
プランB:2027年1〜2月入社(最短)
10月中に応募して、11月中に内定を取る日程です。落とし穴は、退職日が賞与の支給日より前になることです。12月の支給日に在籍していないと、冬の賞与を受け取れない可能性があります。支給日まで在籍して、退職日を12月末に設定する。その条件で転職先が1月入社を受け入れてくれるかが、このプランの分かれ目です。今の職場がつらくて早く抜けたい人や、賞与がもともと少ない人に向いています。
プランC:2027年7月以降入社(夏の賞与まで待つ)
夏の賞与や株式報酬の確定日を待つ日程です。ただし、応募と面接が5〜7月の倍率が低い時期(ライバルが多い時期)に重なります。夏の賞与の額が大きい、あるいは昇格の結果が出るのを待ってから動きたい、といったはっきりした金銭面の理由がある場合に選ぶプランです。
| A:4月入社 | B:1〜2月入社 | C:7月以降入社 | |
|---|---|---|---|
| 選考の時期の季節指数 | 12月117・1月107(有利) | 10月98・11月103(平均並み) | 5〜7月92〜94(不利) |
| 冬の賞与 | 受け取れる | 退職日しだい | 受け取れる |
| 夏の賞与 | 受け取れない | 受け取れない | 受け取れる |
| 向いている人 | 大半の現役エンジニア | 早く環境を変えたい人 | 夏の賞与や権利確定の金額が大きい人 |
プランAで動くなら、10月中にエージェントとの面談を済ませておくと、11月から応募を始められます。エージェントは何社に登録するのがいいか、どう組み合わせるかは転職エージェントの複数登録の記事で詳しく扱っています。
11〜12月の選考に間に合わせるなら、10月中に面談を
ITエンジニア向けの転職エージェントに今の経歴を話して、4月入社を目標にした応募スケジュールと、応募できそうな求人の年収レンジを確認しておきましょう。面談は無料です。
CHECK今動くか、待つか:判定の手順
最後に、ここまでの話を判定の手順にまとめます。上から順に答えていけば、自分にとっての「動き出す月」が決まります。
- 心身の不調・違法な労働条件がある → 季節も賞与も気にせず、すぐに動く。健康や身の安全が最優先。
- 応募したい求人の必須要件を、実績で説明できない → 足りない実績を3〜6か月で作ってから動く。その間に職務経歴書の下書きを進めておく。
- 説明できる → 会社側の時計(賞与の支給日・退職の申し出期限・権利確定日)を確認して、入社月を決める。迷ったら、冬の賞与を受け取ってからの4月入社(プランA)にする。
年収を上げることが一番の目的なら、内定が出たあとの比較と交渉で結果が大きく変わります。転職で年収が下がったときの対処法で取り上げている「下がる原因」を、先に読んで避けておくのも有効です。
よくある質問
転職活動で一番しんどい時期はいつですか?
エンジニアに転職して後悔するのはなぜですか?
12月は年末年始で選考が止まりませんか?
ボーナスをもらってすぐに退職を申し出ても問題ありませんか?
入社して3年経たずに転職すると不利ですか?
まとめ
- IT系エンジニアの求人倍率は、2019〜2025年の7年連続で12月が最高。季節指数は12月117、6〜7月92。上がる理由は、求人が増えるからではなくライバルが減るから。
- 「9〜10月・2〜3月が有利」という通説は、倍率のデータでは確認できなかった。
- 損得に一番響くのは会社側の時計。賞与の支給日在籍要件・退職の申し出期限・有給・権利確定日を、応募の前に確認する。
- 2026年10月に動き出すなら、10月準備→11月応募→12月面接→冬の賞与を受け取る→1月内定・退職の申し出→4月入社が基本形。
参考・出典
- doda「転職求人倍率レポート(データ)」2026年9月17日発表 — https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/
- doda「転職求人倍率レポート(2025年12月)」 — https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/2026/01.html
- doda「転職求人倍率レポート(2026年1月)」 — https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/2026/02.html
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」統計表 — https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r02.html
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」 — https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html
- 沖縄労働局「賞与支給日在籍要件と退職者について」 — https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi/question_3.html
- e-Gov法令検索「民法」第627条 — https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089