教育訓練給付金でエンジニアが講座を選ぶ方法|一般・特定一般・専門実践の違いと、指定講座426件の実績データで見る選び方【2026年10月版】
教育訓練給付金の対象講座を探すと、上位に出てくるのはスクールのおすすめランキングです。ただ、現役エンジニアにとって先に決めることは「どのスクールか」ではありません。自分がどの給付を使えるかを確定し、その給付の対象講座を、厚生労働省の検索システムに載っている実績値で比べることです。
この記事では、給付の3つの種類の違いと受給できない条件を確認したうえで、検索システムに載っている「第四次産業革命スキル習得講座」(専門実践)426講座の詳細ページを全件集計した結果を使い、講座ページのどこを見れば比べられるかを整理します。スクールの探し方の全体像はプログラミングスクールの選び方(5つの比較軸)にまとめているので、この記事では給付金と講座データに絞ります。
- 給付は「一般20%」「特定一般 最大50%」「専門実践 最大80%」の3種類。初回は加入期間1年(専門実践は2年)で使える
- AI・データ・クラウドなどの実務スキルを学ぶなら、候補はほぼ専門実践の「第四次産業革命スキル習得講座」になる。2026年10月時点で119施設・426講座
- 講座ページの「就職・在職者率」は、在職者が多いと自然に高くなるため比べる材料になりにくい。修了認定基準・修了率・修了後の賃金の状況の3つで比べる
- 集計すると、修了後に賃金が増えたと答えた人は29.1%、変わらないが63.9%。80%給付(賃金5%以上の上昇が条件)は、受講するだけでは届かない前提で予算を組む
教育訓練給付金の3種類:給付率・上限・条件の違い
教育訓練給付金は雇用保険の給付で、厚生労働大臣が指定した講座を修了したときに、本人が払った受講料の一部がハローワークから支給されます。指定講座は3つの種類に分かれていて、給付率と手続きが違います。
| 一般教育訓練 | 特定一般教育訓練 | 専門実践教育訓練 | |
|---|---|---|---|
| 基本の給付 | 受講料の20%(上限10万円) | 40%(上限20万円) | 50%(年間上限40万円) |
| 追加の給付 | なし | 資格取得などをして就職(在職のまま取得も可)→50%(上限25万円) | 資格取得など→70%(年56万円) さらに賃金が受講前より5%以上上昇→80%(年64万円) |
| 給付を受けられる期間 | 修了後に1回 | 修了後に1回 | 受講中から6か月ごと。最大3年・192万円 |
| 初回の加入期間 | 1年以上 | 1年以上 | 2年以上 |
| 受講前の手続き | 不要(支給要件照会は任意) | 訓練前キャリアコンサルティングでジョブ・カードを作成し、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認 | |
特定一般の50%と専門実践の80%は、2024年10月1日以降に受講を開始した人が対象。2回目以降の受給は加入期間3年以上が必要。
現役エンジニアに関係する「追加給付」の条件
追加給付の条件は離職者向けに読まれがちですが、在職者も対象です。ハローワークの説明では、専門実践の70%は「雇用されたまま受講した専門実践教育訓練が目標としている資格取得などをした場合」も含みます。資格を目標にしない講座(第四次産業革命スキル習得講座の多く)は、修了が資格取得と同じ扱いになります。
80%はその上で、訓練修了後の賃金が受講開始前と比べて5%以上上がったことが条件です。申請は、資格取得または就職した日のいずれか遅い日から1年以内。在職のまま受講する場合は、今の会社で昇給するか、修了後に年収の高い会社へ転職するかのどちらかで満たすことになります。
実際にいくら戻るか:受講料別の目安
専門実践は年間上限があるので、高い講座ほど実質の給付率が下がります。下の表は受講期間が1年以内の講座を想定した計算です。
| 受講料(1年以内の講座) | 50%(基本) | 70%(資格取得など) | 80%(賃金5%以上上昇) |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 15万円戻る/負担15万円 | 21万円/負担9万円 | 24万円/負担6万円 |
| 55万円(集計した426講座の中央値) | 27.5万円/負担27.5万円 | 38.5万円/負担16.5万円 | 44万円/負担11万円 |
| 100万円 | 40万円(上限)/負担60万円 | 56万円(上限)/負担44万円 | 64万円(上限)/負担36万円 |
同じ30万円の講座でも、一般教育訓練なら戻るのは6万円、特定一般なら12万〜15万円です。給付率の差が大きいので、同じ内容の講座が複数の種類で指定されていれば、使える範囲で率の高い方を選ぶのが基本になります。なお給付額が4千円以下になる場合は支給されません。
先に確認する「自分が使えるか」:受給できない条件
講座を選んでから使えないと分かるのが一番の損です。ハローワークの案内と厚生労働省のQ&Aから、エンジニアが引っかかりやすい条件を並べます。
- 加入期間:初回は一般・特定一般が1年以上、専門実践が2年以上。転職で間が空いても、空白が1年以内なら前後の期間を通算できる
- 前回の受給:受講開始日の前日から3年以内に給付を受けていると使えない。さらに、前回の受講開始日より前の加入期間は通算されないので、2回目は「前回の受講開始日から3年以上」が必要
- 受講開始日:通学制は講座の開講日、通信制は教材などの発送日。本人の初回ログイン日ではない。この日が講座の指定期間内で、かつ加入期間を満たしている必要がある
- 受講前の手続き(特定一般・専門実践):ジョブ・カードを作り、受講開始日の2週間前までに受給資格確認。申込み直後に教材が発送される通信講座は特に注意
- 会社が払う受講料:会社の研修費で払った分は原則対象外。会社から受講料に充てる手当が出る場合は、その分を差し引いて申請する
- 修了:講座ごとの修了認定基準を満たさないと修了証明書が出ず、給付されない。専門実践では、休学などで予定の期間内に修了できない見込みになると、それ以降の給付が止まる
迷ったら「支給要件照会」
受講開始予定日の時点で受給資格があるか、講座が指定を受けているかは、ハローワークに「教育訓練給付金支給要件照会票」を出せば書面で回答されます。窓口・郵送・電子申請で受け付けていて、電話では受け付けていません。転職直後や、過去に給付を受けたことがある人は先に照会しておくと確実です。
エンジニア向けの講座はどの種類に多いか
厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」(2026年10月1日時点の掲載)で、IT系の資格名・分類ごとに検索した施設数です。
| 給付の種類 | 検索した分類・資格名 | 施設数 |
|---|---|---|
| 専門実践 | 第四次産業革命スキル習得講座 | 119(426講座) |
| 職業実践専門課程(情報処理) | 34 | |
| 専門職学位(ビジネス・MOT) | 31 | |
| 高度情報通信技術関係資格(CCNP・その他) | 5 | |
| 特定一般 | 基本情報技術者試験 | 3 |
| 情報通信技術関係資格(その他) | 5 | |
| シスコ技術者認定 | 3 | |
| 一般 | Oracle認定資格 | 6 |
| ITパスポート | 5 | |
| 情報処理技術者試験 | 3 | |
| LPIC認定試験 | 3 |
検索システムの「分野・資格名を指定する」で各項目にチェックして検索した結果の施設数(2026年10月13日に確認)。1施設が複数講座を持つ場合がある。職業実践専門課程は専門学校の課程。
資格試験の対策講座(一般・特定一般)は施設が数か所しかありません。一方、専門実践の第四次産業革命スキル習得講座は、経済産業大臣が認定したIT分野の講座で、2024年10月の基準改正でITスキル標準(ITSS)レベル4相当からレベル3以上に対象が広がり、訓練時間30時間以上・2年以内の講座が指定対象になりました。AI・機械学習、データ分析、クラウド、セキュリティなどの実務講座はここに集まっています。
目的別の候補の絞り方
| 学ぶ目的 | 主な候補 | 注意点 |
|---|---|---|
| 応用情報・LPIC・Oracleなどの資格を取る | 一般・特定一般の試験対策講座 | 施設が少ない。独学の教材費だけで済むなら給付の手続きの手間と比べる |
| AI・データ・クラウドなど実務スキルを足す | 専門実践(第四次産業革命スキル習得講座) | ジョブ・カードと2週間前の手続きが必要。修了認定基準が講座ごとに違う |
| マネジメント・事業側に移る | 専門実践(専門職大学院のMOT・MBAなど) | 2年課程が多い。年間上限があるので、受講料が高いと実質の給付率は下がる |
クラウド資格のように独学で取る人が多い分野は、給付対象の講座に申し込む前に独学の費用と比べる価値があります。AWS資格の位置づけはAWS資格はエンジニアに必要かで整理しています。
検索システムで候補を出す手順
- 検索システム(kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/)の「講座・スクールを探す」を開く
- 「分野・資格名を指定する」を開き、制度(専門実践・特定一般・一般)を選んでから分類にチェックする。第四次産業革命スキル習得講座は専門実践の中にある
- 実施方法(通学の昼・夜・土日、通信の郵送・eラーニング)、訓練期間、訓練経費で絞る
- 特定一般・専門実践では、「就職・在職者率」「目標資格の取得率」「講座修了後の賃金の状況(賃金が上昇している者の割合が高い講座)」でも絞り込める
- 候補の「詳細を見る」で、指定期間・修了認定基準・過去3年度の実績を確認する
スクール名で探す場合も、フリーワード欄に名前を入れれば同じ詳細ページに行けます。スクールの公式サイトの「給付金対象」の表示だけで判断せず、受講したいコース名が検索システムに載っているか、受講開始日が指定期間内かを確認してください。同じスクールでも、給付対象は一部のコースだけということがよくあります(例:WinスクールとPython Winnerの給付金の違い)。
426講座を集計してわかった「講座ページの読み方」
専門実践の講座の詳細ページには、施設が報告した過去3年度分の実績(受講修了者数、入講者数、就職者数・在職者数、修了後の賃金の変化、受講者の満足度など)が載っています。第四次産業革命スキル習得講座の426講座すべての詳細ページを2026年10月13日に取得し、令和7年度の値を集計しました。
① 「就職・在職者率」は在職者が多いと高く出る
就職・在職者率は「修了者のうち、就職した人+在職している人」の割合です。令和7年度の合計では、就職した人が896人、在職のまま修了した人が4,865人で、分子の84.4%は「もともと働いていた人」でした。受講者の大半が在職者の講座では、講座の効果と関係なく率が高くなります。現役エンジニアが比べる指標としては、次の②と③の方が役に立ちます。
② 修了率は講座ごとの差が大きい
入講者数に対する修了者数は、全体では86.0%(入講9,445人、修了8,127人)。入講者が10人以上の132講座で見ると中央値は97.4%ですが、27講座が80%未満、18講座が60%未満でした。修了できなければ給付はゼロなので、修了率は自分の負担額に直結します。入講者数が少ない講座は1人の差で率が大きく動くため、人数も一緒に見てください。
③ 修了後の賃金:「増えた」は約3割
令和7年度に賃金の状況を報告していた184講座(回答3,160人)では、賃金が増えた人は29.1%(1割以上の増加は13.5%)、変わらない人が63.9%、減った人が7.0%でした。回答者が10人以上の72講座で、増えた人の割合の中央値は21.6%。50%以上の講座が12、20%未満の講座が30ありました。
80%給付の条件は「5%以上の上昇」ですが、公表区分は「1割未満の増加」でまとめられていて、5%以上の人数は分かりません。少なくとも、受講するだけで賃金が上がる前提で80%を見込むのは楽観的です。資金計画は70%で組み、80%は昇給や転職で届いたら受け取る追加分と考えておくのが無難です。なお、426講座のうち令和7年度の実績がまだない講座が162あり、新しい講座はこの比較ができません。
④ 修了認定基準は「出席率」と「課題」の組み合わせが多い
修了認定基準に出席率・受講率などの割合を書いている講座では、80%が52講座、100%が33講座、90%が20講座でした。課題の提出・評価を条件にしている講座は279、試験やテストを条件にしている講座は116あります。たとえば「マンツーマンレッスンの受講率90%、オンライン教材の学習率100%、必須課題をすべて達成、最終課題の評価AまたはB」のように、複数の条件をすべて満たす必要がある講座もあります。
業務が忙しい時期に受講が重なると、この基準が一番の壁になります。リリース前や障害対応で数週間止まる可能性がある人は、受講期限の延長や休講の規定と、それが給付にどう影響するかを申込み前にスクールへ確認してください。
講座ページで確認する5項目
- 指定期間(受講開始日がこの期間に入るか)
- 修了認定基準(出席率・課題・試験の条件と、受講期限)
- 修了率(受講修了者数÷入講者数と、その人数)
- 就職者数と在職者数の内訳(率ではなく人数で見る)
- 修了後の賃金の状況(「変わらない」の割合と回答人数)
受講ペース・休講の扱い・給付金の手続きのタイミングは、無料カウンセリングで直接聞くのが早い方法です。
在職のまま受けるか、転職につなげるか
専門実践の追加給付は、在職のままでも転職でも満たせます。ただし、どちらを選ぶかで準備が変わります。
| 在職のまま受講 | 修了後に転職 | |
|---|---|---|
| 70%の条件 | 在職のまま資格取得など(修了) | 修了の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として就職 |
| 80%の条件 | 今の会社で受講前より賃金が5%以上上がる | 転職先の賃金が受講前より5%以上高い |
| 先にやること | 評価・昇給のタイミングと修了日を合わせる。社内の資格手当や異動の条件を確認 | 修了日から逆算して転職活動を始める。年収交渉で受講前の年収を基準にする |
在職のまま賃金を上げにくい事情がある場合は、エンジニアの年収が上がらない原因の切り分けで、社内で上げるか転職で上げるかを先に判断しておくと、講座の選び方もぶれません。転職で年収が下がった場合の給付金の扱いは転職で年収が下がった時の対処法で扱っています。
長い講座なら「教育訓練休暇給付金」も確認する
2025年10月から、在職者が無給の教育訓練休暇を取ったときに生活費を補う「教育訓練休暇給付金」が始まっています。厚生労働省の案内では、条件は休暇開始前2年間に被保険者期間12か月以上、加入期間5年以上、就業規則などに基づく連続30日以上の無給休暇を会社が承認すること。給付日数は加入期間に応じて90日・120日・150日で、対象の訓練には教育訓練給付金の指定講座を持つ法人などが提供するものも含まれます。
会社に休暇制度があることが前提なので、使える人は限られます。受け取ると失業給付などの算定に使う被保険者期間はリセットされますが、案内には教育訓練給付金の支給要件期間には影響しないとあります。
申込みから受給までのスケジュール
| 時期 | やること(専門実践の場合) |
|---|---|
| 受講開始の1か月以上前 | 支給要件照会(任意)。講座の指定期間と受講開始日を確認。訓練前キャリアコンサルティングを予約 |
| 受講開始の2週間前まで | ジョブ・カードを持ってハローワークで受給資格確認 |
| 受講中 | 受講開始日から6か月ごとの期間が終わるたびに、1か月以内に支給申請(50%分) |
| 修了後 | 修了日の翌日から1か月以内に最後の支給申請 |
| 資格取得・就職後 | 資格取得または就職のいずれか遅い日から1か月以内に70%の差額を申請。賃金5%以上上昇の80%は1年以内に申請 |
一般・特定一般は、修了日の翌日から1か月以内に1回申請します(特定一般の追加分は、資格取得または就職のいずれか遅い日から1か月以内)。受講料はいったん全額を自分で払うので、専門実践でも最初の給付は受講開始から6か月後以降です。
よくある質問
転職したばかりでも教育訓練給付金は使えますか?
会社の研修制度でスクールに通う場合も給付を受けられますか?
同じスクールの講座なら、どれでも給付の対象になりますか?
専門実践の80%は在職中でも受け取れますか?
給付を受けた後、次に使えるのはいつですか?
まとめ
教育訓練給付金で講座を選ぶときは、スクールのランキングより先に「使える給付の種類」と「講座ごとの実績」を確認します。
- まず加入期間と前回の受給を確認し、迷ったら支給要件照会を出す
- 実務スキル系なら、候補は専門実践の第四次産業革命スキル習得講座(119施設・426講座)が中心
- 講座ページでは就職・在職者率よりも、修了認定基準・修了率・修了後の賃金の状況で比べる
- 80%給付は受講するだけでは届かない前提で、70%で予算を組む
AI系の講座を具体的に比べたい場合は、DMM 生成AI CAMPとAI Agent Campの比較も参考になります。
参考・出典
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
- ハローワーク「一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyouiku_kyufu.pdf
- 厚生労働省「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」 https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/ (2026年10月1日時点の掲載情報を10月13日に取得)
- 厚生労働省 第45回人材開発分科会 資料2-2「厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準の一部を改正する件案の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/001227750.pdf
- 厚生労働省「教育訓練休暇給付金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/kyukakyufukin.html
- 都道府県労働局・ハローワーク「教育訓練休暇給付金のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/001543278.pdf




