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転職エージェントは「やめとけ」?エンジニアの転職経路を厚労省データで検証|手数料構造の副作用・合わない人の条件・直接応募との使い分け【2026年10月版】

・ 著者:福朗(フリーランスAIエンジニア)
転職エージェントはやめとけ?エンジニアの転職経路をデータで検証、というタイトルのアイキャッチ

「転職エージェントはやめとけ」という意見はSNSでも知恵袋でもよく見かけます。理由として挙がるのは、希望と違う求人を大量に送ってくる、内定承諾を急かす、技術の話が通じない、といったものです。

こうした不満は担当者個人の質の話として片付けられがちですが、多くは報酬の仕組みから説明できます。そして公的統計を見ると、「エージェントを使うと年収が下がる」という説は、少なくとも情報通信業では数字と合いません。

この記事では、厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(2026年8月公表)の原表を集計し、IT業界の転職者がどの経路で入社していて、経路ごとに賃金がどう変わったかを確認します。そのうえで、エージェントが合わないエンジニアの条件と、直接応募・スカウト・リファラルとの使い分けを整理します。

この記事の結論

  1. 情報通信業への転職者のうち、民営職業紹介所(エージェント)経由は16.2%。求人サイト等からの応募(31.0%)や縁故(23.5%)のほうが多い。「エージェントなしでは転職できない」わけではない。
  2. エージェント経由の転職で賃金が減った人は14.9%と、主要な経路の中で最も少ない。ただし「1割以上増えた」割合は求人サイト経由(51.4%)とほぼ同じ50.2%。エージェントの強みは「大きく上げる」より「下げない」ほうに出ている。
  3. 「やめとけ」の正体は、年収に比例する成功報酬が「早く決める」動機を生む構造。年収を50万円上げても仲介会社の報酬は十数万円しか増えないが、話が流れれば報酬は丸ごとゼロになる。
  4. 応募先がすでに決まっている人、ニッチな技術領域の人、首都圏以外で探す人、急かされると判断がぶれる人などは、エージェントを主経路にしないほうがいい。
  5. 使うなら「求人の母集団づくり」と「条件交渉の代行」に用途を絞り、直接応募・スカウトと並行させる。

「やめとけ」と言われる理由は5つに分けられる

上位の検索結果や知恵袋の相談を読むと、エージェントへの不満はおおむね次の5つに分類できます。それぞれ、データや制度で確かめられるものと、仕組みから説明できるものがあります。

半分正しい

① 希望と違う求人を大量に送ってくる

エージェントは「紹介できる求人」の中からしか出せない。取引のない会社は候補に入らない。

構造的に起きやすい

② 内定承諾を急かされる

成功報酬は入社して初めて発生する。承諾が遅れるほど辞退リスクが上がるため、急ぐ理由がある(後述)。

担当者次第

③ 技術の話が通じない

総合型では担当者が複数職種を兼ねることが多い。IT特化型でも、ニッチ領域は読み違えが起きる。

データと合わない

④ 手数料のせいで年収が下がる

情報通信業では、エージェント経由の転職者の方が賃金減少の割合が小さい(次章)。

回避できる

⑤ 退会後も連絡が来る・情報が残る

求職管理簿の作成・保存義務があり、退会してもすべての記録が即消えるわけではない。連絡停止と利用停止は分けて依頼する。

このうち①②③は担当者の当たり外れとして語られがちですが、②は担当者が優秀でも起きます。報酬の仕組みがそうなっているからです。④は統計で検証できます。順に見ていきます。

厚労省データ:IT転職者はどの経路で入社しているか

厚生労働省の雇用動向調査は、約15,000事業所への入職者を対象に、入職経路(どのルートで入社したか)を毎年集計しています。令和7年(2025年)の年計から、情報通信業に転職入職した人(前職がある人)の経路を取り出しました。

読み方の注意点が2つあります。

つまり、IT業界に転職した人の8割強はエージェント以外の経路で入社しています。縁故(23.5%)のうち「前の会社」経由が10.1%あり、元同僚の誘いや出戻りも無視できない規模です。「エージェントを使わないと転職できない」という前提は、少なくとも統計上は成り立ちません。

求人サイト・スカウト・直接応募それぞれの仕組みと探し方は、エンジニアの転職サイトを「経路」で選ぶ方法で詳しく整理しています。

経路別の賃金変動:「エージェントで年収が下がる」は本当か

「エージェント経由だと企業が年収の3割以上を手数料として払うので、その分だけ提示年収が抑えられる」という説があります。雇用動向調査の第14表は、入職経路別に「前職と比べて賃金がどう変わったか」を集計しているので、これで確かめられます。

入職経路(情報通信業)増加うち1割以上増減少人数(千人)
民営職業紹介所72.2%50.2%14.9%24.1
広告(求人サイト等)62.4%51.4%21.5%50.8
その他50.0%44.6%31.7%24.0
縁故45.7%32.5%34.5%38.5
 うち前の会社33.7%29.7%39.4%17.5
情報通信業 計52.8%40.7%24.8%162.5
(参考)全産業 計40.8%28.2%31.0%4,475.9

出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」第14表(産業大分類×入職経路×賃金変動区分別入職者数。対象は前職が雇用者で調査時点に在籍している転職入職者)から筆者が割合を計算。「変わらない」は表から省略しているため、増加+減少は100%にならない。

わかること:エージェントの強みは「下げない」ほう

情報通信業では、エージェント経由の転職者のうち賃金が減った人は14.9%で、主要な経路の中で最も少なくなっています。全産業で見ても、民営職業紹介所経由の減少は24.8%で、広告(28.6%)や縁故(32.7%)より低い水準です。「エージェントを使うと年収が下がる」という説は、この統計とは合いません。

一方で、「1割以上増えた」割合は、エージェント経由(50.2%)と求人サイト経由(51.4%)でほぼ同じです。エージェント経由の「増加」が多いのは、1割未満の小幅な増加が多いためです。エージェントは「大きく上げる」よりも「下がる転職を避ける」ほうで差が出ていると読めます。成功報酬が年収に連動しているので、エージェントにとっても年収ダウンの案件は旨味が小さい、という構造とも合っています。

わからないこと:因果ではなく「選ばれた人」の差かもしれない

この数字は「エージェントを使えば賃金が上がる」ことを示すものではありません。エージェントが登録を受けて紹介を進めるのは、企業に紹介料を払ってもらえる見込みがある人、つまり市場で評価されやすい人に偏ります。もともと年収が上がりやすい層がエージェント経由に集まっている可能性があります。また、これは産業別の集計で、エンジニア職だけを取り出したものではありません。人数も標本調査からの推計値です。

それでも、「エージェント経由は手数料の分だけ年収が削られる」という主張を支える材料は、この統計からは見つかりません。年収交渉をエージェントに任せるときの注意点はエンジニアの年収交渉をエージェントに任せる前にで整理しています。

副作用の正体:成功報酬が「早く決める」動機を生む

では、なぜ「やめとけ」と言われるのか。不満の多くは、報酬の決まり方から説明できます。

転職エージェントの報酬構造の図解。年収を50万円上げても報酬増は17.5万円、内定辞退なら報酬は0円になる
手数料率35%で計算した場合の例。年収交渉で得る報酬の増分より、話が流れたときに失う金額のほうがはるかに大きい。

有料職業紹介の手数料は、多くの場合「入社者の理論年収×一定率」の成功報酬です。料率は各社が厚労省の人材サービス総合サイトに届け出て公開しており、たとえばtype転職エージェントのソフトウェア開発職での実績は32.6%でした。手数料率35%として、年収600万円の内定を例に計算してみます。

年収600万円で入社が決まった場合の紹介料210万円
交渉で年収を650万円に上げた場合の紹介料227.5万円(+17.5万円)
交渉中に話がこじれて内定が流れた場合0円(−210万円)

交渉で年収を50万円上げれば仲介会社の売上は17.5万円増えます。しかし、そのために選考が長引いたり、候補者が他社と比較し始めたりして内定が流れれば、210万円がまるごと消えます。さらに担当者個人の評価は、多くの会社で成約件数や売上で決まります。この条件では、「条件を最大化する」より「確実に早く決める」ほうが合理的になります。

この構造から、次のような行動が起きやすくなります。

前章の統計で「減少は少ないが、1割以上の増加は求人サイト経由と変わらない」という結果が出たことも、この構造で説明できます。米国の不動産仲介を分析した研究(Levitt & Syverson, 2008)でも、仲介業者は自分の家を売るときほど時間をかけて高く売り、顧客の物件は早めに決める傾向が報告されています。成功報酬型の仲介に共通する構造です。

手数料率の相場や、早期退職時の返金規定が担当者の接し方にどう影響するかは、転職エージェントの費用の仕組みで詳しく解説しています。

法律で禁止されていること・相談先

「やめとけ」と言われる行為の中には、法律や許可条件で明確に禁止されているものもあります。2025年1月1日から、職業安定法の指針にあった次の2つが、職業紹介事業の許可条件に加わりました。

禁止事項内容求職者側の意味
転職勧奨の禁止紹介して就職させた人(無期雇用)に、就職日から2年間は転職を勧めてはいけない入社後すぐ「もっといい求人があります」と連絡してくるのは違反にあたる可能性がある
お祝い金の禁止社会通念上相当な程度を超えるお祝い金などの金銭で、求職の申込みを勧めてはいけない「転職成功で○万円」をうたう勧誘は要注意

違反が疑われる場合や、しつこい連絡・虚偽の説明などで困った場合は、都道府県労働局の需給調整事業課(室)が窓口です。事業者が許可を持っているか、手数料や就職者数・早期離職者数をどう届け出ているかは、厚労省の「人材サービス総合サイト」で許可番号から確認できます。届出データの読み方はtype転職エージェントの開示データ検証で実例を示しています。

エージェントが合わないエンジニアの6条件

ここまでの構造を前提にすると、エージェントを主な経路にしない方がいい人の条件が見えてきます。当てはまる数が多いほど、直接応募やスカウトの比重を上げたほうが合理的です。

転職エージェントが合わないエンジニアの6条件のチェックリスト図
2つ以上当てはまるなら、エージェントは「補助」に回し、直接応募・スカウトを主経路にするのが目安。

逆に、エージェントが向いている人

次に当てはまる人は、エージェントを主経路のひとつにする価値があります。

最初の1社をどう選ぶかはエンジニアが初めて転職エージェントを選ぶ判断基準を参考にしてください。

直接応募・スカウト・リファラルとの使い分け

「使う/使わない」の二択で考える必要はありません。経路ごとの得意・不得意を理解して、状況に合わせて組み合わせるのが現実的です。

経路向いている場面弱点
エージェント初めての転職、年収交渉を任せたい、首都圏の求人の厚い職種扱える求人が取引先に限られる。早く決める方向の圧力がかかる
スカウト型
(企業から直接・ヘッドハンター)
時期未定で市場の反応を見たい、ニッチな技術領域、ハイクラスプロフィールの書き込みが甘いとスカウトが来ない。ヘッドハンター経由は実質エージェントと同じ構造
直接応募
(求人サイト・採用ページ)
行きたい会社が決まっている、スタートアップ、地方・リモート書類・面接対策と日程調整をすべて自分でやる。年収交渉も自分で
リファラル・縁故元同僚や知人が働いていて内情を聞ける統計上は賃金が増えにくい(情報通信業で増加45.7%)。断りづらい
エンジニアが転職経路を選ぶための判断フロー図。応募先の有無、技術領域、交渉を任せたいかで分岐する
経路選びの判断フロー。どの経路を選んでも、スカウト型の登録は並行しておくと市場の反応を測れる。

同じ会社に2つの経路から応募しない。エージェントから紹介を受けた会社に、あとから自分で直接応募すると「二重応募」になり、紹介料の扱いをめぐってトラブルになったり、選考で不利に扱われたりすることがあります。経路は会社ごとに1本に決め、自分で応募した会社のリストをエージェントにも伝えておきます。

複数のエージェントやスカウトを併用するときの組み合わせ方と、求人のかぶりを防ぐ方法は複数登録は何社が正解かで解説しています。

使うなら:副作用を抑える5つの運用ルール

エージェントを使うと決めた場合でも、前述の「早く決める」動機を前提に動けば、デメリットはかなり抑えられます。

  1. 最初の面談で「応募しない条件」を先に伝える。年収下限、勤務地、技術スタック、SES・客先常駐の可否など、譲れない条件を文字で渡しておくと、的外れな紹介が減ります。
  2. 回答期限は企業に直接確認したものを基準にする。エージェントが伝える期限が企業の実際の期限より短いこともあります。オファー面談の場で企業に確認するか、延長できるかを担当者に交渉してもらいます。
  3. 自分で調べた求人も並行して持つ。求人サイトやスカウトで見つけた選択肢があると、紹介される求人を相対評価でき、「この中から選ぶしかない」状態を避けられます。
  4. 年収交渉は材料を自分で用意して渡す。他社の提示額、現年収の内訳、市場相場のデータを渡すと、担当者は交渉しやすくなります。
  5. 担当者が合わなければ、担当変更を依頼する。技術理解が浅い、連絡が遅いといった問題は、会社を変えなくても担当を変えるだけで解決することがあります。

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エージェントをやめたいときの手順

使ってみて合わないと感じたら、早めに整理します。手順は次のとおりです。

  1. 選考中の企業があれば、先に辞退か継続かを決める。エージェント経由で選考に進んでいる会社は、エージェントを通じて辞退を伝えるのが基本です。黙って退会すると、企業側に連絡が行かないまま選考が宙に浮きます。
  2. 「休止」か「退会」かを選ぶ。しばらく転職しないだけなら、休止(連絡停止)を依頼すれば十分です。今後も使わないなら退会を申し出ます。
  3. 個人情報の扱いを確認する。職業紹介事業者には求職管理簿の作成・保存義務があるため、退会してもすべての記録がすぐ消えるわけではありません。履歴書などの削除や利用停止を求めたい場合は、各社のプライバシーポリシーにある窓口に、退会とあわせて依頼します。
  4. 連絡が止まらない場合は窓口に相談する。退会後も勧誘が続く、紹介された会社に入社した後に転職を勧められる、といった場合は都道府県労働局の需給調整事業課(室)に相談できます。

担当者から返事が来なくなった場合の判断は、転職エージェントが音信不通になったらにまとめています。

よくある質問

転職エージェントなしで転職することは可能ですか?
可能です。令和7年雇用動向調査では、情報通信業に転職した人のうち民営職業紹介所経由は16.2%で、求人サイト等の広告経由(31.0%)や縁故(23.5%)のほうが多くなっています。応募先が決まっている人や、スカウト型サービスで企業と直接やり取りできる人は、エージェントなしでも十分に転職できます。その場合、書類・面接対策、日程調整、年収交渉は自分で行う必要があります。
転職エージェントを使うと年収は下がりますか?
統計上はその逆です。令和7年雇用動向調査(第14表)で情報通信業の転職者を見ると、民営職業紹介所経由で賃金が減った人は14.9%で、求人サイト等経由(21.5%)や縁故(34.5%)より少なくなっています。ただし、エージェントに登録を受け付けてもらいやすい人がもともと年収を上げやすい層である可能性もあり、「使えば上がる」とまでは言えません。
「転職エージェントを使わない」という意見が多いのはなぜですか?
主な理由は、希望と違う求人の紹介、内定承諾を急かされること、担当者の技術理解の浅さです。これらは担当者個人の問題に見えますが、年収に比例する成功報酬で、内定が流れると報酬がゼロになるという仕組みから起きやすくなっています。仕組みを理解したうえで、用途を絞って使う人も多くいます。
転職エージェントをやめたい(退会したい)ときはどうすればいいですか?
選考中の企業があれば、先にエージェント経由で辞退か継続かを伝えます。そのうえで、一時的に連絡を止めたいなら「休止」、今後使わないなら「退会」を担当者か問い合わせ窓口に申し出ます。職業紹介事業者には求職管理簿の保存義務があるため、履歴書などの削除を求めたい場合はプライバシーポリシーの窓口に退会とあわせて依頼してください。

まとめ

「転職エージェントはやめとけ」という意見は、半分は報酬の仕組みから来る実際の副作用で、半分はデータと合わない思い込みです。

どの経路を使うにしても、応募する会社そのものを見極める手順は共通です。求人票の内容を公開データで裏取りする方法はエンジニア転職の会社選びの基準を参照してください。

参考・出典

  1. 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月公表)
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/index.html
  2. e-Stat 雇用動向調査 令和7年年計 第14表「産業(大分類)、企業規模、性、入職経路、離職期間、賃金変動区分別 入職者数」
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040489955
  3. e-Stat 雇用動向調査 令和7年年計 第16表「産業(中分類)、企業規模、性、職歴、就業形態、雇用形態、入職経路別 入職者数」
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040489957
  4. 労働政策研究・研修機構「統計用語解説:入職経路」
    https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/yougo/d18.html
  5. 厚生労働省「職業紹介事業の許可条件が追加されます(2025年1月1日施行)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/001327688.pdf
  6. 厚生労働省「人材サービス総合サイト」(職業紹介事業者の許可・手数料・就職者数の公開情報)
    https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/JinzaiWeb/GICB101010.do?action=initDisp&screenId=GICB101010
  7. 厚生労働省「キャリア形成・リスキリング推進事業」(無料のキャリアコンサルティング)
    https://carigaku.mhlw.go.jp/
福朗
福朗

フリーランスAIエンジニア。AIパイプライン開発と技術キャリアについて発信しています。

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