求人票の年収の見方|エンジニア求人789件で読む「レンジ上限・みなし残業・賞与込み」と、オファー前の見積もり手順【2026年10月版】
求人票の「想定年収 600万〜1,000万円」は、600万円が保証されているという意味ではありません。多くの場合、月給×12か月に賞与の見込みを足した額で、月給には固定残業代(みなし残業代)が入っています。同じ600万円でも、毎月必ず入る額は求人ごとに100万円以上ずれることがあります。
この記事では、転職サイトGreenに載っているエンジニア職の正社員求人789件の給与欄を集計し、表記の実態を数字で示します。そのうえで、レンジの上限と下限、みなし残業、賞与込みの3点の読み方と、オファー面談の前に「確実に入る年収」を見積もる手順をまとめます。
- 想定年収のレンジは、中央値で下限600万円・上限1,000万円、上限は下限の約1.67倍。上限は「その等級で出せる最大値」で、自分のオファー額の目安にはならない
- 給与欄に固定残業代を書いている求人は約半数(394件・49.9%)。時間数は30時間と45時間に集中し、40時間以上が47%だった
- 想定年収の下限を月給の下限で割ると、中央値は13.25か月分。差の1.25か月ぶんが賞与の見込みで、賞与に触れた求人の約4割は「業績・評価で変動」と書いている
- 比較は「毎月必ず入る額×12」と「基本給の時給換算」に直してから行う。オファー額がレンジの範囲内で決まった場合も、企業は求人票との違いを示す義務がある(職業安定法の変更明示)
01 / DECOMPOSE想定年収は「何を足した数字か」を先に分解する
求人票の年収は、決まった計算式で書かれているわけではありません。ただ、エンジニア求人の給与欄を読むと、ほとんどは次の形に分けられます。
この式のなかで確実に入るのは「月給×12」だけです。賞与は会社の業績や本人の評価で変わり、固定残業代は残業してもしなくても同じ額ですが、その分基本給は小さくなります。基本給が小さいと、残業代の時給(割増賃金の単価)も小さくなります。
手取りがいくらになるかは、この分解が終わってからの話です。額面から手取りへの換算はエンジニアの年収・手取りの計算シミュレーションにまとめています。
02 / DATAエンジニア求人789件で見た年収表記の実態
2026年10月21日に、Greenで言語・クラウド・フレームワークなど30種類のスキルで検索し、出てきた求人の詳細ページから給与欄を取得しました。職種カテゴリが「エンジニア・技術職(システム/ネットワーク)」で雇用形態が正社員の789件を対象にしています。
| 項目 | 件数 | 割合・値 |
|---|---|---|
| 年収の上限と下限が両方書いてある | 764件 | 96.8% |
| レンジの下限(中央値) | — | 600万円 |
| レンジの上限(中央値) | — | 1,000万円 |
| 上限÷下限(中央値) | — | 1.67倍 |
| 上限が下限の2倍以上 | 205件 | 26.8% |
| 給与欄に固定残業代(みなし残業)の記載あり | 394件 | 49.9% |
| └ そのうち時間数を書いている | 347件 | 中央値35時間 |
| └ 時間数を書いた求人で、超過分の支給を明記 | 284件 | 81.8% |
| 給与欄で賞与・ボーナスに触れている | 359件 | 45.5% |
| 年俸制と書いている | 114件 | 14.4% |
| 「スキル・経験に応じて決定」などの文言がある | 451件 | 57.2% |
出典: Green 公開求人の詳細ページ(2026年10月21日取得、エンジニア職・正社員789件)を筆者が集計。給与欄(salaryDetail)の文言をもとに分類しているため、別欄にだけ書かれた情報は含まない。
Greenは掲載企業が自分で給与欄を書く媒体です。エージェント経由の非公開求人やほかの媒体では分布が変わる可能性がありますが、「レンジが広い」「みなし残業込みが多い」「賞与は見込み」という傾向を確かめる材料としては十分な件数です。
03 / RANGEレンジの上限・下限はこう読む
上限は「その等級で出せる最大値」で、自分の目安ではない
レンジの上限は、下限の1.67倍が中央値でした。600万〜1,000万円のように400万円も幅があるのは、1つの求人で複数の等級(グレード)をまとめて募集しているからです。メンバー層からテックリード層まで1枚の求人票で募集すれば、上限はテックリード層の上限になります。
自分のオファー額は、レンジのどこかではなくどの等級に格付けされるかで決まります。上限が2倍以上の求人(26.8%)は特に、等級をまたいでいる可能性が高いと考えてください。
検索フィルタの「年収600万円以上」は上限で引っかかる
レンジ表記は検索でも罠になります。Greenやジェイエイシーリクルートメントの年収フィルタは、レンジの上限が条件を満たせばヒットする仕組みです。「600万円以上」で絞っても、下限400万円の求人が混ざります。一方、TechGoやtype転職エージェントの求人検索は下限で判定します。媒体ごとの違いはエンジニアの転職サイトおすすめ(経路別の使い分けと検索結果の罠)とハイクラスのエンジニア転職エージェント比較で詳しく扱っています。
オファーがレンジの範囲内でも、企業には変更明示の義務がある
求人票に「月給25万〜30万円」と書き、内定時に「28万円」と決めるのは、職業安定法の「変更明示」の対象です。厚生労働省のリーフレットは、次の4つの場合に、労働契約を結ぶ前に変更内容を明示する必要があるとしています。
| 類型 | 厚労省の例 | エンジニア求人で起きやすい形 |
|---|---|---|
| ① 当初と異なる内容 | 基本給30万円 → 28万円 | レンジの下限より低いオファー |
| ② 範囲内で特定 | 基本給25万〜30万円 → 28万円 | レンジ内の金額に決める(ほぼ全員が該当) |
| ③ 明示した条件の削除 | 営業手当3万円 → なし | リモート手当・資格手当が消える |
| ④ 明示していない条件の追加 | 営業手当3万円を新たに追加 | 固定残業代が後から出てくる |
出典: 厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ ~求人の申込みや労働者の募集に当たっての留意事項~」
明示の方法は、求人票の条件と変更後の条件を並べた書面か、労働条件通知書で変更点に下線や色を付ける方法が望ましいとされています。変更の理由を聞かれたら、企業は適切に説明する必要があります。オファー面談で「求人票と違う点はどこか」を聞くのは、失礼な質問ではありません。
04 / FIXED OVERTIMEみなし残業(固定残業代)はこう読む
求人票に書くべき3点がそろっているか
固定残業代を月給に含める求人では、厚生労働省の指針で次の3点を求人票に書くことが求められています(平成30年1月から)。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に当たる労働時間数と金額などの計算方法
- 固定残業時間を超えた時間外労働・休日労働・深夜労働に、割増賃金を追加で払うこと
集計では、固定残業代を書いた394件のうち、給与欄に「基本給」の額を書いていたのは197件で約半数でした。基本給の額が書いていない求人は、面談で聞くまで本当の時給が分かりません。
時間数は30時間と45時間に集中している
「その他」は10〜17時間・33時間・37時間・44時間。出典: Green 公開求人(2026年10月21日取得)を筆者が集計
45時間は、労働基準法の時間外労働の上限(原則として月45時間・年360時間)と同じ数字です。この上限いっぱいの固定残業を設定している求人が90件、45時間を超える設定(46〜60時間)が20件ありました。45時間を超えて働けるのは、労使が特別条項を結んだうえで年6回までです。月45時間を超える固定残業を毎月の前提にしている求人は、実際の残業時間を必ず確認してください。
ただし、時間数が多いこと自体はブラック企業の証拠ではありません。固定残業代は残業しなくても払われるので、実残業が月10時間の会社で45時間分を払っていれば、その分は上乗せです。問題は基本給が小さくなることと、超過分がきちんと払われるかです。
固定残業代が法定の計算に足りているかを逆算する
固定残業代は、法律どおりに計算した残業代を下回ってはいけません。手元の求人票で次の式を計算すると、設定が妥当かが分かります。
求人票の固定残業代がこの額を大きく下回る場合は、実際に設定されている時間数が書いてある時間より短いか、計算の前提(所定労働時間・算入する手当)が違います。どちらかを面談で確認します。
給与欄で管理監督者に触れた求人が17件あり、「管理監督者として採用する場合は固定残業手当なし」といった書き方をしています。管理監督者には時間外・休日の割増賃金が出ない(深夜の割増は出る)ため、等級によっては年収の構成そのものが変わります。裁量労働制の求人(給与欄に記載27件)も、みなし労働時間と手当の額を確認してください。
05 / BONUS「賞与込み」表記はこう読む
想定年収の下限は、月給の13.25か月分が中央値
給与欄に月給の下限が書いてある308件で、想定年収の下限を月給の下限で割ってみました。ちょうど12か月分なら賞与を見込んでいない(年俸の12分割など)求人で、12か月を超えた分が賞与の見込みです。
差の1.25か月分が賞与の見込み
308件中127件。12.5か月以下
| 想定年収 ÷ 月給 | 件数 | 割合 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 12.5か月以下 | 127件 | 41.2% | 年俸の12分割、または賞与を想定年収に入れていない |
| 12.5〜14か月 | 116件 | 37.7% | 賞与見込みは年2か月分まで |
| 14〜16か月 | 47件 | 15.3% | 賞与見込みが年2〜4か月分 |
| 16か月超 | 18件 | 5.8% | 年収の4分の1以上が賞与。業績次第で大きく動く |
出典: Green 公開求人(2026年10月21日取得)を筆者が集計。月給の下限には固定残業代を含む
16か月を超える求人では、年収の4分の1以上が賞与です。業績が悪い年に賞与が半分になれば、年収は1割以上下がります。給与欄で賞与に触れた359件のうち、146件(40.7%)が「業績」「評価」「変動」に言及していて、「昨年度実績」と書いたのは49件(13.6%)でした。
賞与で確認する4つのこと
- 何の何か月分か:「基本給の○か月分」なら、固定残業代を含む月給ではなく基本給で計算される。月給40万円でも基本給が29.6万円なら、3か月分は120万円ではなく約89万円
- 実績か目標か:「昨年度実績」は過去の数字。業績連動なら直近数年の実績の幅を聞く
- 入社初年度の扱い:賞与の算定期間に在籍していないと、初回は減額や寸志になる会社がある。入社月と算定期間を突き合わせる
- 年俸制の分割数:12分割なら賞与はゼロで、毎月の額が大きい。14分割や16分割なら、そのうち2〜4回分が賞与として払われる
入社のタイミングで初年度の賞与がどう変わるかは、ボーナス後に転職するエンジニアのスケジュールでも扱っています。
06 / ESTIMATE2つの求人で「確実に入る年収」を比べる
想定年収が同じ600万円の求人を2つ、仮に置いてみます。数字は説明用のモデルです。
| 求人A | 求人B | |
|---|---|---|
| 想定年収 | 600万円 | 600万円 |
| 月給 | 40万円(固定残業代45時間分・10.4万円を含む) | 50万円(年俸の12分割、固定残業代なし) |
| 基本給 | 29.6万円 | 50万円 |
| 賞与 | 年120万円(業績連動の見込み) | なし |
| 確実に入る額(月給×12) | 480万円 | 600万円 |
| 基本給の時給(所定160時間) | 1,850円 | 3,125円 |
| 月20時間残業したときの年収 | 600万円 | 約694万円 |
| 賞与がゼロの年の年収 | 480万円 | 600万円 |
求人Aは月20時間残業しても45時間の枠内なので、残業代は増えません。求人Bは残業代が全額出るので、50万円÷160時間×1.25×20時間×12か月で約94万円が上乗せされます。同じ「想定年収600万円」でも、実際の年収は480万〜694万円の幅に分かれます。
見積もりの手順
- 月給を分解する:基本給、固定残業代(時間数と金額)、一律手当を分ける。書いていなければ面談で聞く項目に入れる
- 確実に入る額を出す:月給×12。年俸制なら分割数を確認する
- 基本給の時給を出す:基本給÷月平均所定労働時間。現職の時給と比べると、等級の差がはっきりする
- 実残業で補正する:面談や口コミで実残業時間を確認し、固定残業時間を超える分だけ「基本給の時給×1.25」を足す
- 賞与は幅で見る:直近実績の下限と上限で2パターン計算し、下限のパターンで生活が回るかを確かめる
複数の内定を並べる段階では、年収以外の軸も含めて複数内定を比較する軸で整理すると判断がぶれにくくなります。
転職エージェント経由なら、基本給・固定残業代・賞与の実績や等級ごとのレンジを、担当者を通じて応募前に確認できます。企業に直接聞きにくい点を整理してから面談に進めます。
07 / OFFERオファー面談で確認することと、想定年収を下回ったとき
労働条件通知書で突き合わせる項目
内定が出たら、オファーレターや労働条件通知書と求人票を並べて、次の項目を突き合わせます。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も労働条件として明示することになりました(集計した求人の多くも、別欄に変更の範囲を書いていました)。
- 基本給・固定残業代(時間数と金額)・各種手当の内訳が書いてあるか
- 固定残業時間を超えた分を追加で払うと書いてあるか
- 賞与の算定基礎(基本給か月給か)・支給月・初年度の扱い
- 試用期間中の給与が本採用後と違うか(違う場合は両方の明示が必要)
- 等級(グレード)名と、その等級のレンジ・次の等級に上がる条件
- 求人票から変わった項目に印が付いているか、変更の理由の説明があるか
想定年収を下回るオファーは違法か
レンジの下限を下回るオファー自体は、それだけで違法とは言えません。求人票は契約そのものではなく、労働条件は内定時に示される条件で確定します。ただし、企業は契約を結ぶ前に、求人票と違う点を明示しなければなりません。最初の求人票が虚偽や誇大だった場合は、変更明示をしても行政の指導や罰則の対象になりえます。
入社後、明示された条件と実際の条件が違っていた場合、労働基準法15条2項により労働者は即時に契約を解除できます。とはいえ入社後に争うのは現実的ではないので、違いは内定承諾の前に書面で確定させるのが基本です。承諾期限を延ばしてもらう交渉は内定承諾の期限を交渉する方法、金額そのものの交渉はエージェントを使った年収交渉の進め方を参照してください。
求人票のレンジ自体が自分の相場から見て妥当かを知りたい場合は、エンジニアの市場価値診断サービス比較で、算出データの違いを踏まえて使い分けるのが近道です。
よくある質問
求人票の想定年収に残業代は含まれていますか?
求人票の年収レンジの上限はもらえますか?
みなし残業45時間の求人は避けるべきですか?
内定時の年収が求人票の想定年収を下回りました。違法ですか?
年俸制の求人に賞与はありますか?
参考・出典
- 厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000498453.pdf
- 厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ ~求人の申込みや労働者の募集に当たっての留意事項~」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001370511.pdf
- 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172497_00003.html
- 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」 https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html
- Green(エンジニア職の公開求人。2026年10月21日取得・筆者集計) https://www.green-japan.com/




